兄弟の溺愛に堕ちて
エレベーターに乗り込むと、蓮さんの手がふいに私の手を包む。

「蓮さん……」

「ん?」

あまりにも自然で、まるで昔からそうしてきたかのように馴染む温もり。

私は逆に、その手を振りほどくことができなかった。

「レストラン、予約してあるんだ。」

「……ありがとうございます。」

ただの食事のはずなのに――わざわざ予約までしてくれた。

しかも誕生日に。

その気遣いに胸がじんわりと熱を帯び、足取りまで軽くなる。

オフィスビルを出て夜風にあたると、どこか解放された気持ちになった。

しばらく歩いたところで、蓮さんが立ち止まる。

「美咲、ちょっと待ってて。」

「うん。」

そう言って入っていったのは、街角の小さな花屋だった。

ほどなくして戻ってきた彼の手には、可憐な色合いの小さなブーケがあった。

「誕生日、おめでとう。」

差し出された花束に思わず瞬きをする。
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