兄弟の溺愛に堕ちて
気づけば、私は蓮さんの肩に顔を預けていた。

その胸に包まれていると、全てがどうでもよくなってしまう。

背中を撫でる大きな手の感触に、罪悪感よりも安心感が勝っていく。

「美咲……」

囁きと同時に、彼の腕の力が強くなる。

このまま飲み込まれてもいい。

心のどこかで、そう思っている自分がいた。

「チェックお願いします。この部屋につけておいてもらっていいですか。」

店員さんに伝える蓮さんの低い声が、耳の奥に心地よく響いた。

「美咲、行くよ。」

差し出された腕。

その一瞬だけ迷ったけれど、私はそっとその腕に自分の手を絡めた。

これは、私の意思。

強引に連れていかれたんじゃない。

――私が、蓮さんに心を預けたのだ。

「エレベーターに乗るね。」

「……うん。」

重たい扉が閉じると、世界から切り離されたみたいに静かになる。

二人きりの密室。

鏡に映るのは、赤くなった自分の頬と、真剣な眼差しの蓮さん。
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