兄弟の溺愛に堕ちて
カチャリ、とクローゼットに掛ける音。

その間、背後から蓮さんの視線を感じた。

振り返ると、彼はネクタイを緩めながらも、真剣な目で私を見つめていた。

胸が高鳴る。

――ここから、もう逃げられない。

それでも、怖さよりも「一緒にいたい」という気持ちが勝っていた。

「お風呂、入ろうか。」

蓮さんが背中越しに言った。

その声は落ち着いていたけれど、どこか熱を帯びているように感じる。

「うん。」

頷いた私は、浴室へと足を運んだ。

「お湯、貯める?」

「そうだね。」

湯船の栓を閉め、蛇口をひねる。

勢いよく溢れる水音が、張りつめた心を一瞬だけかき消してくれた。

「貯まるまで、待とうね。」

そう振り返った瞬間――。

ドンッ。

背中が冷たい壁に押しつけられた。驚いて目を見開く私の前に、蓮さんの影が覆いかぶさる。

「美咲……好きだ。」
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