兄弟の溺愛に堕ちて
軽やかで壁のない人柄が、その場の空気を自然と和ませていく。

私は少し離れた場所からその様子を見ていたが、ふいに視線が絡んだ。

「この人が、兄貴の秘書の美咲さん?」

名前を呼ばれたわけでもないのに、胸の奥が小さく跳ねる。

「は、はい。」

思わず背筋を正して答えると、蓮さんはにやりと笑った。

その笑みに、兄とは違う種類の熱を感じたのは、気のせいだったのだろうか。

「へえ。噂はかねがね。兄貴から聞いてるよ。」

初対面の蓮さんの言葉に、胸がドキッと跳ねた。

何の噂?と思わず一真さんの方を見ると、彼は「ははは」と苦笑いを浮かべている。

「どんな噂かは知りませんが、実物を見てご判断ください。」

自分でも少し強気だと思うほど高らかに言い切ると、蓮さんがブハッと吹き出した。

「やっぱり兄貴の言ってた通り。」

そう言ってケラケラと笑うその顔は、飾り気がなく、人懐っこい。
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