兄弟の溺愛に堕ちて
けれどその奥に、どこかいたずらっぽい光が宿っているようにも見えた。

「社長!」

再び一真さんを見ると、彼は「まあまあ」と両手を軽く上げ、憎めない笑顔を返してきた。

その笑みが場の空気を和ませる一方で、私の胸には妙なざわめきが残る。

兄とはまるで違う雰囲気の蓮さん。

この出会いが、これからの日常を揺さぶることになるなんて——この時の私は、まだ知らなかった。

「そうだ、美咲さん。帰国パーティー開いてよ。」

唐突に向けられた提案に、思わず瞬きをした。

蓮さんとは今日が初対面。

そんな私に、いきなりパーティーの幹事を頼むなんて。

「帰国パーティーですか?」

「嫌なら、部長就任パーティーでもいいよ。」

笑顔を浮かべながら一歩近づいてくる。

その距離の詰め方が、自然すぎてかえって心臓が落ち着かない。

私はスッと一歩下がった。
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