兄弟の溺愛に堕ちて
 その言葉に心臓が跳ねた。間違い。

――つまり、一緒にいれば私は彼に抱かれるかもしれないということ?頭に血が上る。

「……そう、ですね。」

それ以上は言えなかった。

廊下で別れ、部屋に入る。

カーテンを閉めても、胸の鼓動は収まらない。

白いシーツの上に腰を下ろし、私は顔を覆った。

忘れようとすればするほど、彼を意識してしまう。

浴室から上がっても眠気は訪れない。

時計は午後20時を回っていた。

――隣の部屋には一真さんがいる。

そのことを意識するだけで、寝返りを打つ回数が増えていく。

もし同じ部屋だったら?想像した瞬間、熱が頬に広がった。

彼の体温、声、手のひらの重さ。どれも私の理性を揺さぶる。

「……はあ。」ため息が夜に溶けていった。

この出張は、仕事のためのはず。

けれど、私にとっては――彼を忘れられないことを思い知らされる時間にしかならない。
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