兄弟の溺愛に堕ちて
スマホが震えた。画面に映るのは蓮さんの名前。思わず心臓が高鳴る。

「はい。」

『今日、兄貴と出張だって?』

軽快な声。その明るさに、張りつめていた心が少しだけほどける。

「ええ……」

『あのさ、片想いの相手って、兄貴だったっけ。』

呼吸が止まった。なぜ知っているの――?答えられずにいると、蓮さんが柔らかく畳みかける。

『図星だな。……じゃあ、俺が必要だろ。ホテルの名前は?』

咄嗟に否定できなかった。

自分でも驚くほど、寂しさと不安が勝った。気づけば口が動いていた。

泊っているホテルの名前を口にしていた。

『オッケー。すぐ行く。』

電話が切れ、心臓が騒ぎ出す。

どうして言ってしまったの?

後悔が渦巻く間もなく――15分後。トントン、とドアを叩く音が響いた。

「一真さん……?」

恐る恐る開けた扉の向こうに、立っていたのは蓮さんだった。
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