兄弟の溺愛に堕ちて
「そうだ、シャワー浴びていい?俺、今日帰らないといけないんだ。」

「うん。」

蓮さんは唇を重ねると、名残惜しそうに立ち上がり、バスルームへと消えていった。

水音が遠くに響く。残されたベッドの中で、私はひとり胸に手を当てる。

(ありがとう、なんて言葉……私が欲しかったのは、それじゃないのに……)

そして蓮さんはシャワーを浴びて出てくると、タオルで髪を拭きながら、ふと真剣な目をして言った。

「なあ、美咲。」

「ん? 何?」

私はベッドの端で下着を身につけていた。

「俺と深い仲になってるって、兄貴にはまだ内緒な。」

思いがけない言葉に手が止まる。

蓮さんはわざと軽くクスっと笑った。

「ほら、時期が来たら俺が直接言うから。」

「うん……」そう答えながらも、胸の奥がざわめく。

私はホテルの備え付けのパジャマを着て、視線を伏せた。
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