兄弟の溺愛に堕ちて
恥ずかしさで穴があったら入りたい。

「……あの、他にも聞こえてきたことってありますか?」

「えっ?」

一真さんが目をぱちくりさせる。

「い、いびきとか……くしゃみとか……」

まさか……あの声とか聞かれてないよね?

視線を泳がせる私に、一真さんは少し間をおいて、言いにくそうに呟いた。

「ああ……ええっと……」

「……喘ぎ声とか?」

——頭が真っ白になった。

(うひゃあああああ!)心の中で悲鳴を上げる。

一真さんは気まずそうに咳払いをしてから、言葉を続けた。

「……一人でしてたわけじゃないよね。彼氏?」

その「彼氏」という一言が、胸に鋭く突き刺さる。

本当は、"彼氏"じゃない。

求めていたのは——。

「……っ!」唇を噛みしめ、俯いた。答えられない。

「まあ、そういう時もあるよね。」

大人過ぎる。理解あり過ぎるよ、一真さん。
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