兄弟の溺愛に堕ちて
そしてエレベーターの扉が開き、私達は新幹線の駅へと歩き出した。

「でも——可愛かった。」

「は?」

前を歩く一真さんが、ちらっと振り返る。

「俺も……盛り上がったし。」

意味がわからない。慌てて彼の肩を掴む。

「ちょ、ちょっと待ってください!盛り上がったって……まさか……」

彼は困ったように眉を下げて、ぽつりと答えた。

「……致したとか。」

心臓が止まる。

「は、はぁあああ⁉」思わず叫んでしまう。

一真さんは小さく笑って、視線を逸らした。

「バレた?」

頭の中が真っ白になった。

——私の喘ぎ声で……一真さん、したってこと?

足から力が抜け、その場でガクッと膝を折る。

「ちょ、ちょっと待って……嘘でしょ……」

新幹線の構内を行き交う人々のざわめきが遠くなる。

羞恥と衝撃で、耳まで熱くなり、息が詰まりそうだった。
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