兄弟の溺愛に堕ちて
「二人兄弟だからね。昔からの絆ってやつじゃない?」

異母兄弟——母親が違う兄弟。

もっと複雑な空気が漂ってもおかしくないのに、二人の間には屈託がない。

見つめ合って笑う顔は、まるで信頼で繋がっている証のようだった。

そんな絆の強さが、胸にじんわりと広がる。羨ましい、と思った。

私には兄弟がいない。だから余計に、この距離感が眩しく見えるのだ。

「じゃあ、俺。営業部に顔出してくるわ。」

軽い口調でそう告げ、蓮さんは会議室を後にした。

扉が閉まると同時に、室内には静けさが戻る。

私は会議で使ったカップやペットボトルを手に取り、片付けを始めた。

その時だった。一真さんが、私のすぐ横を通り抜ける。

ふわりと落ち着いた香りが鼻をかすめ、心臓が跳ねた。

「蓮には……近づきすぎるな。」

低く抑えた声が耳元に落ちる。

驚いて振り返った時には、もう一真さんの背中は遠ざかっていた。
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