兄弟の溺愛に堕ちて

第4章 パーティー

それから数日後のことだった。

一真さんが、妙なお願いを切り出してきた。

「今度、会社のパーティーがある。久我ホールディングスの系列が一堂に会するんだ。それに——同席して欲しい。」

「……パーティー、ですか?」

思わず声が裏返った。

「そうだ。ドレスは華美でなくていい。落ち着いたもので構わない。」

頭に浮かんだのはただひとつ。
——なぜ私?

三年前からずっと秘書を務めてきたけれど、一真さんに同行して公の場に出たことは一度もない。

パーティーがあること自体は知っていた。

けれど、それは社長や役員たちが参加する“別世界”で、自分には関係ないものだと思っていた。

「えっと……どうして私なんでしょうか?」

恐る恐る問うと、一真さんはふっと笑った。

「理由が必要か?」

心臓が跳ねた。

あまりに不意打ちな眼差しで。

「君にーーー隣にいて欲しいだけだよ。」

ドキリと胸が熱くなる。
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