兄弟の溺愛に堕ちて
「……ああ。で、その……一緒に行ってくれないか。」

「え……」

耳を疑った。

それは、まるで——パートナーとして招いてくれと言っているように聞こえた。

ドキン、と心臓が跳ねる。

一真さんからも「隣にいてほしい」と頼まれたばかりなのに。

(どうしよう……どちらかを選ばなければならないの?でも、私なんかが——両方の人に誘われるなんて……)

コピー用紙を抱えたまま、私はその場に立ち尽くしてしまった。

「……社長に同席して欲しいって言われているの。」

勇気を出して打ち明けると、蓮さんは少し目を見開いた。

けれど——私が想像していたようにがっかりした顔はしなかった。

「秘書だからか。」

「……そうなの?」

「うん、結構秘書を連れてくる社長が多いらしい。仕事で忙しいから、そういう人にしか頼めないんだろう。」

(そういう意味……?)

胸の奥に、かすかな痛みが広がった。

私はてっきり、特別な意味を期待してしまっていた。
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