赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
「……当たり前ではないですか」
私はセルヴィス様の紺碧の瞳を見ながら言葉を紡ぐ。
「確かに私はあなたに国を売りつけようとはしていますが、誰が私を守ってくれだなんていいました?」
私が今までどれだけの修羅場を潜り抜けてきたとお思いで? と私は得意げに胸を張る。
「言ったでしょう? 可哀想なヒロインに王子様が手を差し伸べてくれるのなんて御伽話の世界だけですわって」
そして、私は可哀想なヒロインではないし、そうなるつもりもないのだとはっきり告げる。
「私があなたに国を売ろうと思ったのは、あなたが国のために必要だと判断すれば非情な手段も取れる強く賢い人だからです」
その緋色の椅子はどれだけ不自由で孤独なのだろう。
苦しくて、悲しくて、痛くても。
その椅子に座る間は"個"ではなく、"公"を優先させなければならない。
でなければ、国はあっという間に傾きはじめる。
クローゼアのように。
「失望させないでください」
それでいいのです、と私は微笑み私は不敬を承知でセルヴィス様の頬に手を伸ばす。
「私はどんな状況に追い込まれても、けして生き延びることを諦めたりしない」
だって、私が諦めて死んでしまったらきっとイザベラもセルヴィス様も自分のせいにして私の命まで背負おうとするから。
そんな事、させてあげない。
私の命は、最後の瞬間まで私だけのモノだ。
「売国が叶うまでは、どんな手段を使っても必ずあなたの元に戻ります」
だから、待っていてくださいと言った私に、
「強いな、君は」
セルヴィス様は自分から擦り寄るようにして私に触れた。
セルヴィス様はこの部屋を出たら、また冷酷無慈悲な皇帝陛下を演じなくてはいけない。民衆からそれを望まれ続ける限り、ずっと。
そして、彼は期待に応えるのだろう。
自分を偽ってでも。
「おまじないを、かけて差し上げましょうか?」
自分の中にある弱さも苦しさも孤独も全部飲み込んで、誰かのために立ち続けられるイザベラと同じ強くて優しい人。
そんな彼の心を少しでも軽くしてあげたくて、私はそう言って笑う。
「おまじない?」
「ええ、とってもよく効くのですよ」
私は椅子に座ってとセルヴィス様を誘導する。
それは昔、第一王女として人前に出ることが怖かった私に、お母様が教えてくれた方法。
「目を閉じて」
と私の手でセルヴィス様の両目を覆う。
「ゆっくり呼吸を落ち着けて。なりたい自分を思い浮かべるの」
私はなるべく穏やかな声を意識しながら、
「大丈夫、ヴィーならできる。私はそう信じてる」
お母様がそうしてくれていた通り、私はセルヴィス様を抱きしめてそう囁くとそっと彼の額にキスをした。
「……もう目を開けてもいいですよ」
私に促され、紺碧の瞳がゆっくりと目を開く。
とても落ち着いて穏やかな、それでいてやるべき事をやり遂げなくてはという強い目。
「どう、でしょうか?」
「ああ、悪くない気分だ」
そう言って笑ったセルヴィス様は私の腕を引く。
突然の事でバランスを崩した私は、軽々とセルヴィス様に受け止められていて。
とても近い距離にある紺碧の瞳に驚いている間に、
「俺もお返しとして君に"おまじない"をしておく」
聞いたことのない言葉を囁いて私の額にキスをした。
「ふぇっ!?」
額に手をやり奇声を発した私に満足げに笑ったセルヴィス様は、
「"暴君王女"のお墨付き。これは期待に応えなくては、な?」
自信家で尊大な帝国の若き支配者の顔をしていた。
私はセルヴィス様の紺碧の瞳を見ながら言葉を紡ぐ。
「確かに私はあなたに国を売りつけようとはしていますが、誰が私を守ってくれだなんていいました?」
私が今までどれだけの修羅場を潜り抜けてきたとお思いで? と私は得意げに胸を張る。
「言ったでしょう? 可哀想なヒロインに王子様が手を差し伸べてくれるのなんて御伽話の世界だけですわって」
そして、私は可哀想なヒロインではないし、そうなるつもりもないのだとはっきり告げる。
「私があなたに国を売ろうと思ったのは、あなたが国のために必要だと判断すれば非情な手段も取れる強く賢い人だからです」
その緋色の椅子はどれだけ不自由で孤独なのだろう。
苦しくて、悲しくて、痛くても。
その椅子に座る間は"個"ではなく、"公"を優先させなければならない。
でなければ、国はあっという間に傾きはじめる。
クローゼアのように。
「失望させないでください」
それでいいのです、と私は微笑み私は不敬を承知でセルヴィス様の頬に手を伸ばす。
「私はどんな状況に追い込まれても、けして生き延びることを諦めたりしない」
だって、私が諦めて死んでしまったらきっとイザベラもセルヴィス様も自分のせいにして私の命まで背負おうとするから。
そんな事、させてあげない。
私の命は、最後の瞬間まで私だけのモノだ。
「売国が叶うまでは、どんな手段を使っても必ずあなたの元に戻ります」
だから、待っていてくださいと言った私に、
「強いな、君は」
セルヴィス様は自分から擦り寄るようにして私に触れた。
セルヴィス様はこの部屋を出たら、また冷酷無慈悲な皇帝陛下を演じなくてはいけない。民衆からそれを望まれ続ける限り、ずっと。
そして、彼は期待に応えるのだろう。
自分を偽ってでも。
「おまじないを、かけて差し上げましょうか?」
自分の中にある弱さも苦しさも孤独も全部飲み込んで、誰かのために立ち続けられるイザベラと同じ強くて優しい人。
そんな彼の心を少しでも軽くしてあげたくて、私はそう言って笑う。
「おまじない?」
「ええ、とってもよく効くのですよ」
私は椅子に座ってとセルヴィス様を誘導する。
それは昔、第一王女として人前に出ることが怖かった私に、お母様が教えてくれた方法。
「目を閉じて」
と私の手でセルヴィス様の両目を覆う。
「ゆっくり呼吸を落ち着けて。なりたい自分を思い浮かべるの」
私はなるべく穏やかな声を意識しながら、
「大丈夫、ヴィーならできる。私はそう信じてる」
お母様がそうしてくれていた通り、私はセルヴィス様を抱きしめてそう囁くとそっと彼の額にキスをした。
「……もう目を開けてもいいですよ」
私に促され、紺碧の瞳がゆっくりと目を開く。
とても落ち着いて穏やかな、それでいてやるべき事をやり遂げなくてはという強い目。
「どう、でしょうか?」
「ああ、悪くない気分だ」
そう言って笑ったセルヴィス様は私の腕を引く。
突然の事でバランスを崩した私は、軽々とセルヴィス様に受け止められていて。
とても近い距離にある紺碧の瞳に驚いている間に、
「俺もお返しとして君に"おまじない"をしておく」
聞いたことのない言葉を囁いて私の額にキスをした。
「ふぇっ!?」
額に手をやり奇声を発した私に満足げに笑ったセルヴィス様は、
「"暴君王女"のお墨付き。これは期待に応えなくては、な?」
自信家で尊大な帝国の若き支配者の顔をしていた。