赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
 クローゼアからイザベラの偽物として嫁ぐ私に、

『決して外さないでください』

 とサーシャ先生がくれた指輪。
 これには遅延と指輪が魔道具だとバレないための認識阻害の魔法が組んである。
 魔道具にはそれを発動させるためのエネルギー。つまり、魔力が必要だ。
 私のように普通の人間には感知できないが、適性のある人間には魔力が感じ取れるらしい。
 帝国はクローゼアよりずっと魔法文化が根付いている。セルヴィス様自身も獣人の血を引いているだけあって魔力が強いし、その配下にあるモノなら魔力を感知できる人間がいる可能性がある。

『時間に干渉する魔法は特に強力なエネルギーを必要とします。魔法が効果をなくし、本来リィル様が時間をかけて受けるはずだった苦痛は反動として全て御身に降りかかり、一気に病気が進行するでしょう』

 サーシャ先生はそれでもコレを身につけるのかと渋い顔で言っていたけれど。
 もし、それほどまで強力な魔法の存在を感知させないための魔法を壊したなら?
 上手く行けば私を捜索しているだろう誰かが突如感知した強力な魔力を不審に思い来てくれるかもしれない。
 痛みに私の身体が耐えられるかどうかも分からないし、たとえ助けを呼べてもリープ病は一気に進む。
 分の悪い賭けだけど、コレ以外に思いつかなかった。

 勢い良く地面に叩きつけられた指輪に嵌められた魔法石は綺麗に砕けた。
 息をすることすらできないほどの重苦しい痛みに私は地面にうずくまる。
 その瞬間だった。
 パチンっという何かが弾かれるような大きな音と共に目が眩むような光が私を包み思わず目を閉じた。
 光が収まり目を開けた瞬間、私は驚き何度も目を瞬かせる。

「……どう、して?」

 そこにいたのは漆黒の夜を集めたような大きな狼、ヴィーだった。

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