赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
「いい取り組みだと思うのよね。下級使用人は簡単な雑用しか任されないし、任用期間が切れたら使い捨てられる。でも、教育が行き届いていれば、再就職の時有利でしょうし」
気まぐれな施しを与えるより、ずっと価値があり根気のいる支援。
彼女はそれを一人でやっていた。
「お祖母様が良く言っていたわ。子女にこそ教育がいる、って。ヒトを育てれば、国は育つ、と」
「聡明な方だったのね」
国民への教育。
本来、これは国が主導的にやるべきことだ。クローゼアでもそうだったけど、必要性を感じていないどころか民に余計な知識を持たせるなと主張する貴族が蔓延る状態ではすぐに改善することはできないだろうけど。
「真面目に受けた子の識字率は上がってるし、素晴らしい取り組みだとは思うけど、一人でやるには効率が悪すぎる。コツコツ実績を積めば、陛下も考えてくれるはずよ。というわけで、後宮人材育成費確保のためにもコレは売ります」
コレ、と贈り物の山を指し、
「ああ、リタ侯爵令嬢が始めたことなんだから、責任持って実現可能な事業計画書を持って来て頂戴ね。この国で私が使える人脈なんてないんだから」
シエラに私の方針を伝える。
「シエラ、でいいわよ。散々ヒトの事を呼び捨てにしていたのだし、あなたは今私の仕える主なのですから」
私の真意を読み取ったローズピンクの瞳はにこやかに笑い、
「承知しました」
仕事モードに戻ったシエラは恭しく了承を告げた。
「ってわけで、手っ取り早く売るためにオークションやりたいんだけど、リタ家に伝手はない?」
とシエラに尋ねる。
「こういうのはグレイスが」
言葉を途切れさせたシエラの顔が曇る。
「彼女から連絡はないの?」
「ない、ですね」
私の問いにシエラはゆっくり首を振る。
私とシエラが誘拐された後、グレイスは何も告げずハリス大公家のエリック様の元に嫁いだ。
表向きは緊迫するハリス公国とオゥルディ帝国との和平のために。
私にその事が告げられた時には既にグレイスの姿はこの国にはなく。
あの誘拐事件にグレイスが関わっていたのか、真相は何一つ分からないままで。
情報が与えられない私達は当事者だというのに未消化なまま、置いてけぼりを喰らっている。
「馬鹿だと思うでしょう? それでも……私はグレイスを」
信じていたいのだ、とシエラは力なく笑った。ローズピンクの瞳はただ寂しげな色をしていて。
シエラはグレイスのことが大好きなのだと痛い程伝わってくる。
彼女達二人の間に何があったのかなんて、私には知る由もないけれど。
「別に、バカだとは思わないわ。それがシエラの選んだ道なのでしょう? なら、貫けばいい」
だからあなたはここに残ることを選んだのでしょう? とローズピンクの瞳を見ながら私は言葉を紡ぐ。
「突き詰めて、自分で見極めなければ前に進めないこともある。責任を取る覚悟があるのなら信じた道を行けばいい」
それが間違いかどうかなんて、突き進んで見なければ誰にも分からないのだから。
「私は利害が一致してるからシエラを側に置いているだけだし」
真相を知りたいシエラと私。
できるなら売国先の不安要素は取り除いておきたい私にとって、シエラの存在はグレイスに繋がる細い糸だった。
「私では、グレイスを釣ることはできないと思うけど」
「それならそれで構わない。別にシエラ一人置いたところで邪魔にはならないし」
さて、おしゃべりはここまでと告げた私は、
「じゃ、オークション準備頼んだわね」
陛下に呼ばれているの、とシエラに後を任せて部屋を後にした。
気まぐれな施しを与えるより、ずっと価値があり根気のいる支援。
彼女はそれを一人でやっていた。
「お祖母様が良く言っていたわ。子女にこそ教育がいる、って。ヒトを育てれば、国は育つ、と」
「聡明な方だったのね」
国民への教育。
本来、これは国が主導的にやるべきことだ。クローゼアでもそうだったけど、必要性を感じていないどころか民に余計な知識を持たせるなと主張する貴族が蔓延る状態ではすぐに改善することはできないだろうけど。
「真面目に受けた子の識字率は上がってるし、素晴らしい取り組みだとは思うけど、一人でやるには効率が悪すぎる。コツコツ実績を積めば、陛下も考えてくれるはずよ。というわけで、後宮人材育成費確保のためにもコレは売ります」
コレ、と贈り物の山を指し、
「ああ、リタ侯爵令嬢が始めたことなんだから、責任持って実現可能な事業計画書を持って来て頂戴ね。この国で私が使える人脈なんてないんだから」
シエラに私の方針を伝える。
「シエラ、でいいわよ。散々ヒトの事を呼び捨てにしていたのだし、あなたは今私の仕える主なのですから」
私の真意を読み取ったローズピンクの瞳はにこやかに笑い、
「承知しました」
仕事モードに戻ったシエラは恭しく了承を告げた。
「ってわけで、手っ取り早く売るためにオークションやりたいんだけど、リタ家に伝手はない?」
とシエラに尋ねる。
「こういうのはグレイスが」
言葉を途切れさせたシエラの顔が曇る。
「彼女から連絡はないの?」
「ない、ですね」
私の問いにシエラはゆっくり首を振る。
私とシエラが誘拐された後、グレイスは何も告げずハリス大公家のエリック様の元に嫁いだ。
表向きは緊迫するハリス公国とオゥルディ帝国との和平のために。
私にその事が告げられた時には既にグレイスの姿はこの国にはなく。
あの誘拐事件にグレイスが関わっていたのか、真相は何一つ分からないままで。
情報が与えられない私達は当事者だというのに未消化なまま、置いてけぼりを喰らっている。
「馬鹿だと思うでしょう? それでも……私はグレイスを」
信じていたいのだ、とシエラは力なく笑った。ローズピンクの瞳はただ寂しげな色をしていて。
シエラはグレイスのことが大好きなのだと痛い程伝わってくる。
彼女達二人の間に何があったのかなんて、私には知る由もないけれど。
「別に、バカだとは思わないわ。それがシエラの選んだ道なのでしょう? なら、貫けばいい」
だからあなたはここに残ることを選んだのでしょう? とローズピンクの瞳を見ながら私は言葉を紡ぐ。
「突き詰めて、自分で見極めなければ前に進めないこともある。責任を取る覚悟があるのなら信じた道を行けばいい」
それが間違いかどうかなんて、突き進んで見なければ誰にも分からないのだから。
「私は利害が一致してるからシエラを側に置いているだけだし」
真相を知りたいシエラと私。
できるなら売国先の不安要素は取り除いておきたい私にとって、シエラの存在はグレイスに繋がる細い糸だった。
「私では、グレイスを釣ることはできないと思うけど」
「それならそれで構わない。別にシエラ一人置いたところで邪魔にはならないし」
さて、おしゃべりはここまでと告げた私は、
「じゃ、オークション準備頼んだわね」
陛下に呼ばれているの、とシエラに後を任せて部屋を後にした。