赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
「やぁ、やぁ。それにしても2人とも元気そうで安心したよ」
そう言って呑気にお茶を飲むアルカは、
「はぁ、美味しい。けど、ポップコーンだし、コーヒー欲しいなぁ。最近は深煎りがお気に入りなんだ」
そう言って注文をつける。
「……アルカ、遠慮ってモノを留学先に置いて来たんじゃないの?」
「やだなぁ、シエラ。母上の腹に忘れて来たに決まってるじゃないか」
「とって来なさい、今すぐに」
「母上の腹を切り裂けだなんて、いくら幼馴染のお願いでも聞けないかなぁ」
母上には長生きしていただきたいし、と笑い飛ばすアルカ。
ツッコミの大渋滞ね、と2人の掛け合いを微笑ましい思いで聞きつつ立ち上がった私は、
「コーヒーはなくて悪いのだけど、近いモノなら。アルカ嬢、研究職はコーヒーを好まれる方が多いですが、カフェインの取り過ぎは身体に毒ですよ?」
ほどほどに、と告げて作り置きのタンポポコーヒーを取り出し淹れる。
「これは! なかなか美味だな」
「結構自信作ですよ」
そう言って私は瓶を振る。
これはセルヴィス様がコーヒーを嗜まれると知り、以後勝手に差し入れている品だ。
コーヒーにはカフェインが入っている。それは犬にとって致命的になりかねない毒物で。
人の姿の時は多分大丈夫なんだろう、と思いつつどうしても気になってしまい作ってしまったタンポポコーヒー。
押し付けるように渡したのに、セルヴィス様はお気に召してくれたようで、今ではコレを愛飲してくれている。
「ポップコーンといい、タンポポコーヒーといい、イザベラ妃は本当に博識だな」
「たまたま、ですよ」
そう、たまたま。
本を片手に食べられる食材を漁っていたときに身につけた知識に過ぎない。
クローゼアでの私は、口にできるモノを自分で探さなければ、すぐにでも死んでいただろうから。
「さて、ではそろそろ御用向きをお伺いいたしましょうか?」
そう言ってアルカが寄越した封筒を見せた。
「お返事が蝶々になって飛んでいくお手紙なんて初めて貰ったから驚きましたわ」
アルカから届いたそれには簡潔に私への謁見の申し出と返信用のカードが入っていた。
情報源が限られている今、使えるものはなんでも使いたい。
了承を認めた途端カードは蝶になって飛んでいき、そして本日彼女は唐突に私の前に現れた。
「他言無用で願いたい」
先程までのふざけた雰囲気が消え、真剣な表情を浮かべるアルカ。
手紙には謁見の理由は書かれていなかった。
ヒトに知られては不味い内容で、緊急性を要するものなのかもしれない。
ただの側妃、しかもほとんど関わりのない私にそれがもたらされる可能性は限りなくゼロに近い。
が、シエラを手元に置いている今その可能性がないとは言えない。
アルカがことっと箱が置き、
「イザベラ妃にご報告が」
深刻そうな声でそう告げる。
もし、死の霧に繋がる情報なら……。
緊張する私の目の前でゆっくりと箱が解かれる。
「じゃじゃーん。改良型保温カップが完成したんだ」
第一号だよとドヤ顔で自慢するアルカ。
「……はい?」
さっきまでのタメはなんだったんだ!? とズッコケそうになった私はなんとも気の抜けた返事をしてしまった。
「イザベラ妃に賜った助言を元に酸化しないための魔法式を組み込んでね。ようやく完成したんだ」
特にこの構造式を入れ込むのに苦労して、なんて目の前で解説されるが魔術に関しては全くの専門外なので語られた内容のほとんどが理解できない。
これはどういう状況? とシエラに視線を向ければ、
「アルカは見ての通り魔道具オタクなのよ。この間お茶会でイザベラがアルカの魔道具に興味を示してたから進捗状況報告したかったんじゃない?」
と解説してくれた。
そう言って呑気にお茶を飲むアルカは、
「はぁ、美味しい。けど、ポップコーンだし、コーヒー欲しいなぁ。最近は深煎りがお気に入りなんだ」
そう言って注文をつける。
「……アルカ、遠慮ってモノを留学先に置いて来たんじゃないの?」
「やだなぁ、シエラ。母上の腹に忘れて来たに決まってるじゃないか」
「とって来なさい、今すぐに」
「母上の腹を切り裂けだなんて、いくら幼馴染のお願いでも聞けないかなぁ」
母上には長生きしていただきたいし、と笑い飛ばすアルカ。
ツッコミの大渋滞ね、と2人の掛け合いを微笑ましい思いで聞きつつ立ち上がった私は、
「コーヒーはなくて悪いのだけど、近いモノなら。アルカ嬢、研究職はコーヒーを好まれる方が多いですが、カフェインの取り過ぎは身体に毒ですよ?」
ほどほどに、と告げて作り置きのタンポポコーヒーを取り出し淹れる。
「これは! なかなか美味だな」
「結構自信作ですよ」
そう言って私は瓶を振る。
これはセルヴィス様がコーヒーを嗜まれると知り、以後勝手に差し入れている品だ。
コーヒーにはカフェインが入っている。それは犬にとって致命的になりかねない毒物で。
人の姿の時は多分大丈夫なんだろう、と思いつつどうしても気になってしまい作ってしまったタンポポコーヒー。
押し付けるように渡したのに、セルヴィス様はお気に召してくれたようで、今ではコレを愛飲してくれている。
「ポップコーンといい、タンポポコーヒーといい、イザベラ妃は本当に博識だな」
「たまたま、ですよ」
そう、たまたま。
本を片手に食べられる食材を漁っていたときに身につけた知識に過ぎない。
クローゼアでの私は、口にできるモノを自分で探さなければ、すぐにでも死んでいただろうから。
「さて、ではそろそろ御用向きをお伺いいたしましょうか?」
そう言ってアルカが寄越した封筒を見せた。
「お返事が蝶々になって飛んでいくお手紙なんて初めて貰ったから驚きましたわ」
アルカから届いたそれには簡潔に私への謁見の申し出と返信用のカードが入っていた。
情報源が限られている今、使えるものはなんでも使いたい。
了承を認めた途端カードは蝶になって飛んでいき、そして本日彼女は唐突に私の前に現れた。
「他言無用で願いたい」
先程までのふざけた雰囲気が消え、真剣な表情を浮かべるアルカ。
手紙には謁見の理由は書かれていなかった。
ヒトに知られては不味い内容で、緊急性を要するものなのかもしれない。
ただの側妃、しかもほとんど関わりのない私にそれがもたらされる可能性は限りなくゼロに近い。
が、シエラを手元に置いている今その可能性がないとは言えない。
アルカがことっと箱が置き、
「イザベラ妃にご報告が」
深刻そうな声でそう告げる。
もし、死の霧に繋がる情報なら……。
緊張する私の目の前でゆっくりと箱が解かれる。
「じゃじゃーん。改良型保温カップが完成したんだ」
第一号だよとドヤ顔で自慢するアルカ。
「……はい?」
さっきまでのタメはなんだったんだ!? とズッコケそうになった私はなんとも気の抜けた返事をしてしまった。
「イザベラ妃に賜った助言を元に酸化しないための魔法式を組み込んでね。ようやく完成したんだ」
特にこの構造式を入れ込むのに苦労して、なんて目の前で解説されるが魔術に関しては全くの専門外なので語られた内容のほとんどが理解できない。
これはどういう状況? とシエラに視線を向ければ、
「アルカは見ての通り魔道具オタクなのよ。この間お茶会でイザベラがアルカの魔道具に興味を示してたから進捗状況報告したかったんじゃない?」
と解説してくれた。