赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
「鳩やカラスではないのですね」
クローゼアでも特殊な訓練を施した伝書鳩でやり取りをする事はあったけれど、鷲のような大型の鳥は見たことがない。
「用途に応じて使い分けている」
なるほど。
早く長く飛ばせる猛禽類を従えられていたのなら、情報戦でもクローゼアは帝国に劣る。
今更ながら本当に負け戦だったな、とため息しか出てこない。
「帝国に入って来ているモノが"偽物"だけであればいいのですけれど」
カルディアの現地調査は"先帝の呪い"の原因究明のため、と思っていたけれど。
多分、それだけではないのだろう。とはいえ、情報が少ないしそもそも政治的なアレコレが得意なのはイザベラの方。
私にできる事なんてせいぜい。
「"喧嘩"はほどほどにしてくださいね」
直接セルヴィス様に釘を刺すことくらいか。まぁ、なんの効力もありはしないだろうけど。
ただ売国を試みようとしている身としては取引相手がきな臭いのは頂けない。
「俺がしているのなんてせいぜい火の粉を払う程度だ」
可愛いものだろ? と肩をすくめて見せるセルヴィス様の目は全く笑っていなくて。
「とはいえ"偽物"は所詮"偽物"。害悪は全部排除してしまえば済む話だ」
もし、今私がイザベラの"偽物"だと露見したなら、容赦なくこの人は"リィル"をこの場で切り捨てる。
そう、確信させるほど酷く冷たい物言いに、背筋が凍りそうになる。
「左様でございますか」
皇帝陛下を欺くリスクなんて、初めから分かっていた。
「こちらもお返ししますね」
私はセルヴィス様に買って頂いた沢山の贈り物を彼に渡す。
「そっちは別にリーリィに買ったもので」
返す必要は、と言ったセルヴィス様に私は無理矢理荷物を押し付ける。
「分かっています。目的の物だけ購入しては目立つから贈ってくださったのでしょう?」
『お前なんかが生まれて来たから』
耳奥で聞き飽きたセリフが勝手に再生される。
悲しいとか、痛いとか、そんな感情とうに捨てた。だから今更でしょ? と私は自分に言い聞かせる。
「寵妃の真似事は、今は必要ないでしょ?」
「リーリィ?」
"偽物"は所詮"偽物"で。
偽物の命はすぐさま切り捨てられるほど軽いんだって。
嫌になるほど、この身で実感しながら生きてきたというのに。
「私にこれらは不要です。いらないなら侍女にでも下賜なさってください」
私は今更、一体何を期待したというのだろう?
「私が欲しいのは、髪飾りでも宝石でもありません」
笑え、と私は自分に命令する。
決して腹の内を悟らせるな、と。
「"保証"。それだけです」
敗戦したクローゼアの民が虐げられ、搾取される事がないように。
これから先、一人で立ち続けることになるイザベラがクローゼアを統括管理できるように。
私が遺して逝かなくてはならない人達が、これから先を生きていけるだけの"保証"。
それを得るために、私はこの人に示さなくてはならない。
クローゼアには失くすには惜しい人材が存在するのだ、と。
「早く、次の場所に行きましょう。時間は有限なのですから」
そう言って私はセルヴィス様を促し、歩き出す。
(本物には、なれなくても)
"偽物"には"偽物"の矜持がある。
けして、偽物だと見破らせたりしない、という矜持が。
クローゼアでも特殊な訓練を施した伝書鳩でやり取りをする事はあったけれど、鷲のような大型の鳥は見たことがない。
「用途に応じて使い分けている」
なるほど。
早く長く飛ばせる猛禽類を従えられていたのなら、情報戦でもクローゼアは帝国に劣る。
今更ながら本当に負け戦だったな、とため息しか出てこない。
「帝国に入って来ているモノが"偽物"だけであればいいのですけれど」
カルディアの現地調査は"先帝の呪い"の原因究明のため、と思っていたけれど。
多分、それだけではないのだろう。とはいえ、情報が少ないしそもそも政治的なアレコレが得意なのはイザベラの方。
私にできる事なんてせいぜい。
「"喧嘩"はほどほどにしてくださいね」
直接セルヴィス様に釘を刺すことくらいか。まぁ、なんの効力もありはしないだろうけど。
ただ売国を試みようとしている身としては取引相手がきな臭いのは頂けない。
「俺がしているのなんてせいぜい火の粉を払う程度だ」
可愛いものだろ? と肩をすくめて見せるセルヴィス様の目は全く笑っていなくて。
「とはいえ"偽物"は所詮"偽物"。害悪は全部排除してしまえば済む話だ」
もし、今私がイザベラの"偽物"だと露見したなら、容赦なくこの人は"リィル"をこの場で切り捨てる。
そう、確信させるほど酷く冷たい物言いに、背筋が凍りそうになる。
「左様でございますか」
皇帝陛下を欺くリスクなんて、初めから分かっていた。
「こちらもお返ししますね」
私はセルヴィス様に買って頂いた沢山の贈り物を彼に渡す。
「そっちは別にリーリィに買ったもので」
返す必要は、と言ったセルヴィス様に私は無理矢理荷物を押し付ける。
「分かっています。目的の物だけ購入しては目立つから贈ってくださったのでしょう?」
『お前なんかが生まれて来たから』
耳奥で聞き飽きたセリフが勝手に再生される。
悲しいとか、痛いとか、そんな感情とうに捨てた。だから今更でしょ? と私は自分に言い聞かせる。
「寵妃の真似事は、今は必要ないでしょ?」
「リーリィ?」
"偽物"は所詮"偽物"で。
偽物の命はすぐさま切り捨てられるほど軽いんだって。
嫌になるほど、この身で実感しながら生きてきたというのに。
「私にこれらは不要です。いらないなら侍女にでも下賜なさってください」
私は今更、一体何を期待したというのだろう?
「私が欲しいのは、髪飾りでも宝石でもありません」
笑え、と私は自分に命令する。
決して腹の内を悟らせるな、と。
「"保証"。それだけです」
敗戦したクローゼアの民が虐げられ、搾取される事がないように。
これから先、一人で立ち続けることになるイザベラがクローゼアを統括管理できるように。
私が遺して逝かなくてはならない人達が、これから先を生きていけるだけの"保証"。
それを得るために、私はこの人に示さなくてはならない。
クローゼアには失くすには惜しい人材が存在するのだ、と。
「早く、次の場所に行きましょう。時間は有限なのですから」
そう言って私はセルヴィス様を促し、歩き出す。
(本物には、なれなくても)
"偽物"には"偽物"の矜持がある。
けして、偽物だと見破らせたりしない、という矜持が。