赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
「染料の原産地も早々に突き止めろ。トカゲの尻尾が繋がっているうちにな」

 カルディアを仕切る領主だけがアヘンの密輸に関わっていたとは思えない。
 その後ろには、おそらく……。と、セルヴィスがなかなか尻尾を出さないその存在に舌打ちしたところで、

「それも、暴君王女の助言……ですか?」

 とオスカーが静かな声で尋ねた。

「ああ、イザベラが言っていた。独特の色味だから染料として使用された植物が取れる地域がある程度絞れるだろう、と」

 オスカーに鷲を送った時に暗号化し伝えた内容をセルヴィスは再度繰り返す。

「それは、本当に信頼できる情報ですか?」

 だが、オスカーは懐疑的だった。

「今回、彼女の知識と判断に救われた。それは、事実だ」

 アヘンの件だけではない。
 スイセンの中毒者は経口補水液で対処療法を取った事で回復し命が救われているし、原因を取り除いたことでその後の中毒患者が目に見えて激減した。

「……それは、理解しています」

 オスカーは警戒心を含ませた声音で、ため息交じりに今回の出来事を認めた。

「なんだ。不服そうだな」

「不服、というわけでは……」

 セルヴィスとはそれこそ幼少期からの付き合いだ。
 先帝時代政治的に立場が弱かったオスカーの父が、理不尽にセルヴィスを押し付けられたことに始まり、果ては家門ごとまとめて辺境地に飛ばされた。
 以降セルヴィスとはずっと苦楽を共にしてきているのだ。
 セルヴィスのやり方は理解しているし、セルヴィスに仕えて来たことにも不満はない。

「ただ、セルヴィス様が彼女に必要以上に入れ込むのが心配なだけです」

 確かにセルヴィスがいうように現在の彼女はこちら側に協力的ではある。
 が、オスカーの中で強く印象に残っているイザベラは、公の場で傍若無人に振る舞い、礼儀を弁えず、使用人を物のように扱う"暴君王女"の姿で。
 自分が間違っているなどとは微塵も思っていない、この国の先帝の考えに近い人種だった。
 アレが全て演技だというのなら、彼女の言葉に嘘が混ざっていても見破れる自信がない。
 もし、イザベラがすでに別の誰かと手を組んでいて、セルヴィスの信頼を得たのち裏切る算段をつけているのだとすれば?
 彼女は敗戦国の人間だ。帝国に復讐しようと企んでいてもおかしくはない。
 信頼するには、リスクが高過ぎる。

「なら、お前はいつも通り疑っていればいい」

 セルヴィスはオスカーを咎める事なく肯定する。

「よろしいので?」

 あっさりとセルヴィスにそう言われた事でオスカーは戸惑い聞き返す。
 仮にも"寵妃"として扱い、その上助言まで聞き入れるほど価値を見出しているイザベラを疑い、隠す事なくそのように扱えという。
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