根暗な貴方は私の光
口をついて出ていた。自分でもこんなことを口走るなんて驚きだった。
「私と一緒にこの店から、この世界から逃げ出すのはどう?」
それでも、もう一度同じような誘惑の言葉を並べる。江波方の反応を楽しむように、はたまた自分自身に言い聞かせるように紬は言った。
「に、げる……?」
「……なんてね。無理だからここにいるんですもの、戯言でしか無いわよね」
一拍置いて呼吸を整えると、今自分が何を言ったのか理解する。あまりにも現実味を帯びておらず、聞いて呆れるような内容だった。
「蕗ちゃんと風柳が飲める年になったら、ここでぱーっとやりたいなあ!」
「俺は遠慮しておきます。芝さん酔うと面倒くさそうなので」
「何だ、つれないな。蕗ちゃんはどうだい? 酒はなくてもちょっとした宴会なら気を負わなくてもいいだろう」
「そうですね。ここでなら何でも楽しいと思います」
紬は自身が言った通り、芝や仁武や小瀧がいるだけで店の雰囲気が人段階以上明るくなると思った。
到底自分ではこんなふうに皆を笑顔にできない。ずっと昔に捨てたはずの妬みの感情が再び蘇ろうとしていた。
「私、本当に何言っているんだろう。ごめんなさい、困らせたわよね」
「い、いえ。気にしないで、くだ、さい……」
少ない人数とはいえ騒がしいはずなのに、どうしてこんなにも寂しいと感じるのだろう。
近い未来、紬は彼らを送り出さなければならない。紬や鏡子、友里恵だけではなく、まだまだ未来を見るべき蕗も例外ではないのだ。
「おい、江波方。聞いているのか?」
「江波方さん、このままだと俺達と一緒に外周追加で走らされますよー」
「え! 嘘! 風柳くんそれ本当!?」
「嘘ですよ。気を向けるために嘘を吐くものではありません」
目の前で揶揄われている江波方に皆の視線が集中した。根暗で誰にも気づかれないくらい存在感が薄いと思われていた彼は、十分に皆の目に止まっていた。
そしてそんな彼を見て、紬は精一杯の愛おしさを込めて小さく呟く。
「……やっと笑った」
「え……」
彼に聞き返されてしまうよりも先に紬は席を立つ。呼び止めれば振り返るつもりだったが、彼は呼び止めてはくれなかった。
「私と一緒にこの店から、この世界から逃げ出すのはどう?」
それでも、もう一度同じような誘惑の言葉を並べる。江波方の反応を楽しむように、はたまた自分自身に言い聞かせるように紬は言った。
「に、げる……?」
「……なんてね。無理だからここにいるんですもの、戯言でしか無いわよね」
一拍置いて呼吸を整えると、今自分が何を言ったのか理解する。あまりにも現実味を帯びておらず、聞いて呆れるような内容だった。
「蕗ちゃんと風柳が飲める年になったら、ここでぱーっとやりたいなあ!」
「俺は遠慮しておきます。芝さん酔うと面倒くさそうなので」
「何だ、つれないな。蕗ちゃんはどうだい? 酒はなくてもちょっとした宴会なら気を負わなくてもいいだろう」
「そうですね。ここでなら何でも楽しいと思います」
紬は自身が言った通り、芝や仁武や小瀧がいるだけで店の雰囲気が人段階以上明るくなると思った。
到底自分ではこんなふうに皆を笑顔にできない。ずっと昔に捨てたはずの妬みの感情が再び蘇ろうとしていた。
「私、本当に何言っているんだろう。ごめんなさい、困らせたわよね」
「い、いえ。気にしないで、くだ、さい……」
少ない人数とはいえ騒がしいはずなのに、どうしてこんなにも寂しいと感じるのだろう。
近い未来、紬は彼らを送り出さなければならない。紬や鏡子、友里恵だけではなく、まだまだ未来を見るべき蕗も例外ではないのだ。
「おい、江波方。聞いているのか?」
「江波方さん、このままだと俺達と一緒に外周追加で走らされますよー」
「え! 嘘! 風柳くんそれ本当!?」
「嘘ですよ。気を向けるために嘘を吐くものではありません」
目の前で揶揄われている江波方に皆の視線が集中した。根暗で誰にも気づかれないくらい存在感が薄いと思われていた彼は、十分に皆の目に止まっていた。
そしてそんな彼を見て、紬は精一杯の愛おしさを込めて小さく呟く。
「……やっと笑った」
「え……」
彼に聞き返されてしまうよりも先に紬は席を立つ。呼び止めれば振り返るつもりだったが、彼は呼び止めてはくれなかった。