根暗な貴方は私の光
後悔
江波方はそんな紬の絶望を知ってか知らずか強く身体を抱き寄せた。
ぴったりと隙間無く身体が密着する。継続的に聞こえてくる心音がやけに速く、彼の不安が直に伝わってくるようだった。
けれど、彼にこうして抱き締められているからか、不安が無くなったわけではないが微かに恐怖が和らいだ。
このまま彼の腕の中に居続けられたら、そう物思いにふけっていたのも束の間。
「まずい!」
その時、ある方向を見つめていた江波方が声を荒げた。こんなにも焦った様子の彼など、これまでに見たことがあっただろうか。
再び紬を抱き寄せた江波方は、彼女を庇うようにその方向へ自身の背中を向ける。
どくんと一際大きく心臓が脈打ち、紬は閉じていた目を開ける。
見上げれば何処か遠くを見て絶望した様子の江波方が目に入った。
「どうしたんですか!?」
「もう時間がない。早くここから避難しないと!」
何が彼らをそんなに不安にさせるのか分からなかった紬は、顔を引き抜き無理矢理江波方の背後を覗いた。
そして、全てを理解し言葉を無くす。
彼らの視線の先には、命の恩人である鏡子が何よりも大切にしていた茶屋柳凪の建物がある。そしてその上には、一機の爆撃機。
身体中から血の気が引いていくのを感じた。
「嫌、嫌だ!!」
「駄目だ蕗! 動けばあれに狙われる!」
背後で蕗の叫び声が聞こえた。暴れる彼女を必死に止めようとする仁武の声も聞こえる。
けれど、紬はそれらに意識を向けることすら拒んだ。
嫌、やめて。これ以上私から大切なものを奪わないで。
「やめて……」
江波方が紬の顔を無理矢理自身の胸に押し当て、全ての光景から目を逸らさせる。
紬の小さな呟きは彼の胸の中で消え、泣き声が爆発音に掻き消されていった。
ガラガラとけたたましい音を立てて建物が崩れていく。江波方の腕の中で紬は全ての光景から目を逸らした。
今目を開けてしまえば正気でいられないと思ったのだ。だから彼の身体に身を委ね、何もかもから逃げようとした。
ぴったりと隙間無く身体が密着する。継続的に聞こえてくる心音がやけに速く、彼の不安が直に伝わってくるようだった。
けれど、彼にこうして抱き締められているからか、不安が無くなったわけではないが微かに恐怖が和らいだ。
このまま彼の腕の中に居続けられたら、そう物思いにふけっていたのも束の間。
「まずい!」
その時、ある方向を見つめていた江波方が声を荒げた。こんなにも焦った様子の彼など、これまでに見たことがあっただろうか。
再び紬を抱き寄せた江波方は、彼女を庇うようにその方向へ自身の背中を向ける。
どくんと一際大きく心臓が脈打ち、紬は閉じていた目を開ける。
見上げれば何処か遠くを見て絶望した様子の江波方が目に入った。
「どうしたんですか!?」
「もう時間がない。早くここから避難しないと!」
何が彼らをそんなに不安にさせるのか分からなかった紬は、顔を引き抜き無理矢理江波方の背後を覗いた。
そして、全てを理解し言葉を無くす。
彼らの視線の先には、命の恩人である鏡子が何よりも大切にしていた茶屋柳凪の建物がある。そしてその上には、一機の爆撃機。
身体中から血の気が引いていくのを感じた。
「嫌、嫌だ!!」
「駄目だ蕗! 動けばあれに狙われる!」
背後で蕗の叫び声が聞こえた。暴れる彼女を必死に止めようとする仁武の声も聞こえる。
けれど、紬はそれらに意識を向けることすら拒んだ。
嫌、やめて。これ以上私から大切なものを奪わないで。
「やめて……」
江波方が紬の顔を無理矢理自身の胸に押し当て、全ての光景から目を逸らさせる。
紬の小さな呟きは彼の胸の中で消え、泣き声が爆発音に掻き消されていった。
ガラガラとけたたましい音を立てて建物が崩れていく。江波方の腕の中で紬は全ての光景から目を逸らした。
今目を開けてしまえば正気でいられないと思ったのだ。だから彼の身体に身を委ね、何もかもから逃げようとした。