根暗な貴方は私の光
そう言って振り返った江波方は柔らかく目を細め笑っていた。まただ。もう何度目かも分からないほど彼のその笑顔を見るなり心臓がとくんと跳ねる。
紬も彼を追って写真館に近づいた。薄汚れた窓の向こう側にはお客さんを写したであろう色褪せた白黒の写真が飾られている。どの写真も写っている人々は幸せそうに笑っていた。
「今日は、風柳くんの誕生日なんです。前に柳凪で蕗ちゃんの誕生日会をしたでしょう。だから、今日は風柳くんが主役の日」
「……そう、だったのね。私、知らなかったわ」
蕗の誕生日を祝った日、仁武は「集合写真を撮ろう」と言って柳凪に集まった皆を一枚の写真に撮ったことがあった。
その時は彼が写真機を操作していたため写真には写っていない。随分と慣れた手つきで写真を撮るものだから不思議だったのだ。
この時代で写真を取ることができる人間はそう多くない。それこそ、写真館を営んでいるか経験のある人間くらいのものだろう。
しかし、実家が写真館であったとなれば納得がいく。仁武は昔から写真と身近な生活を送っていたのだろう。
「まだ蕗ちゃんは来ていないんですよ。なんで、今日は蕗ちゃんをびっくりさせることを兼ねた風柳くんの誕生日会です」
そう言った江波方はいたずらを企てる子供の如く楽しげに笑った。
初めは戸惑っていた紬も江波方のそんな笑顔を見ると自然と笑顔になる。
おもしろそうではないか。十年という歳月を経て蕗は感情が豊かになったのである。きっといい反応が見られることだろう。
「いいわね。それじゃあ気合を入れて準備しましょうか!」
満面の笑みを浮かべた紬は江波方と共に写真館の中に入って行った。
紬も彼を追って写真館に近づいた。薄汚れた窓の向こう側にはお客さんを写したであろう色褪せた白黒の写真が飾られている。どの写真も写っている人々は幸せそうに笑っていた。
「今日は、風柳くんの誕生日なんです。前に柳凪で蕗ちゃんの誕生日会をしたでしょう。だから、今日は風柳くんが主役の日」
「……そう、だったのね。私、知らなかったわ」
蕗の誕生日を祝った日、仁武は「集合写真を撮ろう」と言って柳凪に集まった皆を一枚の写真に撮ったことがあった。
その時は彼が写真機を操作していたため写真には写っていない。随分と慣れた手つきで写真を撮るものだから不思議だったのだ。
この時代で写真を取ることができる人間はそう多くない。それこそ、写真館を営んでいるか経験のある人間くらいのものだろう。
しかし、実家が写真館であったとなれば納得がいく。仁武は昔から写真と身近な生活を送っていたのだろう。
「まだ蕗ちゃんは来ていないんですよ。なんで、今日は蕗ちゃんをびっくりさせることを兼ねた風柳くんの誕生日会です」
そう言った江波方はいたずらを企てる子供の如く楽しげに笑った。
初めは戸惑っていた紬も江波方のそんな笑顔を見ると自然と笑顔になる。
おもしろそうではないか。十年という歳月を経て蕗は感情が豊かになったのである。きっといい反応が見られることだろう。
「いいわね。それじゃあ気合を入れて準備しましょうか!」
満面の笑みを浮かべた紬は江波方と共に写真館の中に入って行った。