アバター★ミー 〜#スマホアプリで最高の私を手に入れる!〜
Scroll-10:すれ違う私たち
「おはよう琴音!」
「おっ、おはよう! どうしたの志帆、今日はいつになく元気じゃん」
玄関を開けると、いつものように琴音が待ってくれていた。
今日の私は【ルックス】をひとつだけアップしている。お母さんには何も聞かれなかったから、琴音もきっと気付かないだろう。
「フフフ。昨日、ラインもせずに黙ってたことがあるの。実はね——」
琴音がウンウンと頷きながら、キラキラとした眼差しを私に向ける。
「桐島くんたちの勉強会、参加しないかって誘われたの! 楓に!」
「楓……あ、水野さんね。そ、それはおめでとう」
琴音の表情が、みるみると沈んでゆく。
「ちっ、違うよ、誘われたのは私だけじゃなくて、琴音もだよ? もちろん、参加するよね?」
「うーん……私はいいかな。桐島くんたちのことは、決して嫌いじゃないし、良い人たちだって思ってる。でも、私がそこにいくのはちょっと違うような気がして。そ……それに、私は一人で勉強する方が合ってるから。——あ。志帆は気にせず、行ってくれていいからね」
琴音はそう言って、私から視線を外した。
私は間違いなく、琴音も喜んで一緒に勉強してくれるものと思ってた。だけどそれは、私の思い過ごしだったようだ。
だけど、中間テストの時は一緒に勉強したよね? あの時は無理して付き合ってくれてたってこと……? 確かに、2人で絵を描き出したら止まらなかったけど……
その後の私たちは、ほとんど会話を交わさないまま、学校に着いてしまった。
***
最初の休憩時間になった。いつもならすぐに私の席へ来てくれる琴音が、一人で廊下へと出ていってしまう。お手洗いだろうか……その時でも絶対、声をかけてくれていたのに……
「おはよう、相川! 勉強会参加してくれるんだってな、ありがとう!」
桐島くんたちが私の席へ来てくれた。私は「こちらこそ」と、小さく頭を下げる。
「で、白石も来てくれるんだろ?」
「い、いや、それがね佐伯くん。琴音、勉強は一人でやる方が合ってるって言って、難しいかなって……」
私がそう言うと、佐伯くんは「そうか……」と残念がった。
「でさ。志帆は国語が得意なんだって。これで、英語と数学と国語の先生が揃ったね。残りの2人は、理科か社会の先生になれるように頑張ってよ」
ちなみに、英語の先生は楓。数学の先生は佐伯くんとのことだ。
「ちょ、ちょっと待った、楓。いつから志帆って呼ぶようになったんだよ」
「ん? 昨日からだけど?」
「そうなのか! じゃ、俺もそうするわ。なんか、相川だけ名字呼びしてるの、しっくり来てなかったんだよな。俺こう見えて、キッチリ統一してないとすまないタイプだから」
「例えば、どういうとこよ?」
「ほら、筆箱と机の角度がビシッと合ってないと嫌とか、そんな感じ」
「アハハ! 玲央が授業中に筆箱をやたら触ると思ってたら、そういうことだったのね!」
姫川さんは大きな声で笑った。
「ってことだから、俺も志帆って呼ぶわ。もちろん、俺は玲央で。——にしても、国語の先生が増えたのは助かるわー」
そう喜んでくれる玲央くんの向こう側で、教室へと戻ってきた琴音が見えた。チラッとこちらを一度見る琴音。そしてそのまま彼女は、自分の席へと戻っていってしまった。
***
次の休み時間も、私は玲央くんたちのグループの中にいた。
琴音は一人で、自分の席に座っている。ノートに何かを書いているようだ。
「——気になるようだったら、声かけてきたら?」
佐伯くんだった。私が「うん」と言って立ち上がった時、琴音に2人の女子が声をかけた。小池さんと長岡さんだ。確か小池さんは、漫画を描いてると聞いたことがある。
「も、もう大丈夫みたい」
「ああ……そうみたいだな」
琴音のホッとしたような笑顔を見た私は、安心する気持ちと少しだけ寂しい気持ちが入り混じっていた。
***
「ということで、期末テストに向けた第3回勉強会を始めます。今回から、国語の志帆先生が参加となりました。皆さん、拍手!」
玲央くんの言葉に、皆が笑顔で私に拍手を送る。ここは少し郊外にある、大型のハンバーガーショップ。2階にある、隅っこのエリアを陣取っている。
「じゃ、志帆が初参加ってことで、今一度、俺たちのルールを説明しておこう。まず入店時はもちろん、途中で一度は再オーダーすること。勉強禁止って流れが最近多いから、ここはお店のためにもお小遣いを削ろう。そして、私語禁止はもちろん、勉強での調べ物以外にスマホは触らない。——って、他にもなんかあったっけ?」
「いや、そんなもんじゃない? あと絶対じゃないけど、基本的には皆で同じ教科をやるって感じだね。今日は英語と国語って具合に。——志帆、こんな感じで大丈夫?」
そう聞いてきた莉奈ちゃんに「うん」と頷いた。結局、玲央くん以外も下の名前で呼び合うことになったのだ。
早速、勉強会が始まった。今日は英語からだ。
みんなとても静かに勉強している。クラスメイトがこのシーンを見たら、ビックリするかもしれない。
そして早速、玲央くんが楓に質問を投げかけた。
「で、玲央はどれが正解だと思うのよ」
「に……2番だよな?」
「違う、そこはハァヴ。だから、3番。疑問文の時は、現在形になるって前も言ったでしょうが」
「おっ……おー! そうだったな!」
ハーブ? お茶に使われる奴?
って、よくよく聞いていたら“have”のことだった。流石、ネイティブ……
あれ……?
そういや私、【頭の良さ】って今日いくつにしていたっけ……?
「おっ、おはよう! どうしたの志帆、今日はいつになく元気じゃん」
玄関を開けると、いつものように琴音が待ってくれていた。
今日の私は【ルックス】をひとつだけアップしている。お母さんには何も聞かれなかったから、琴音もきっと気付かないだろう。
「フフフ。昨日、ラインもせずに黙ってたことがあるの。実はね——」
琴音がウンウンと頷きながら、キラキラとした眼差しを私に向ける。
「桐島くんたちの勉強会、参加しないかって誘われたの! 楓に!」
「楓……あ、水野さんね。そ、それはおめでとう」
琴音の表情が、みるみると沈んでゆく。
「ちっ、違うよ、誘われたのは私だけじゃなくて、琴音もだよ? もちろん、参加するよね?」
「うーん……私はいいかな。桐島くんたちのことは、決して嫌いじゃないし、良い人たちだって思ってる。でも、私がそこにいくのはちょっと違うような気がして。そ……それに、私は一人で勉強する方が合ってるから。——あ。志帆は気にせず、行ってくれていいからね」
琴音はそう言って、私から視線を外した。
私は間違いなく、琴音も喜んで一緒に勉強してくれるものと思ってた。だけどそれは、私の思い過ごしだったようだ。
だけど、中間テストの時は一緒に勉強したよね? あの時は無理して付き合ってくれてたってこと……? 確かに、2人で絵を描き出したら止まらなかったけど……
その後の私たちは、ほとんど会話を交わさないまま、学校に着いてしまった。
***
最初の休憩時間になった。いつもならすぐに私の席へ来てくれる琴音が、一人で廊下へと出ていってしまう。お手洗いだろうか……その時でも絶対、声をかけてくれていたのに……
「おはよう、相川! 勉強会参加してくれるんだってな、ありがとう!」
桐島くんたちが私の席へ来てくれた。私は「こちらこそ」と、小さく頭を下げる。
「で、白石も来てくれるんだろ?」
「い、いや、それがね佐伯くん。琴音、勉強は一人でやる方が合ってるって言って、難しいかなって……」
私がそう言うと、佐伯くんは「そうか……」と残念がった。
「でさ。志帆は国語が得意なんだって。これで、英語と数学と国語の先生が揃ったね。残りの2人は、理科か社会の先生になれるように頑張ってよ」
ちなみに、英語の先生は楓。数学の先生は佐伯くんとのことだ。
「ちょ、ちょっと待った、楓。いつから志帆って呼ぶようになったんだよ」
「ん? 昨日からだけど?」
「そうなのか! じゃ、俺もそうするわ。なんか、相川だけ名字呼びしてるの、しっくり来てなかったんだよな。俺こう見えて、キッチリ統一してないとすまないタイプだから」
「例えば、どういうとこよ?」
「ほら、筆箱と机の角度がビシッと合ってないと嫌とか、そんな感じ」
「アハハ! 玲央が授業中に筆箱をやたら触ると思ってたら、そういうことだったのね!」
姫川さんは大きな声で笑った。
「ってことだから、俺も志帆って呼ぶわ。もちろん、俺は玲央で。——にしても、国語の先生が増えたのは助かるわー」
そう喜んでくれる玲央くんの向こう側で、教室へと戻ってきた琴音が見えた。チラッとこちらを一度見る琴音。そしてそのまま彼女は、自分の席へと戻っていってしまった。
***
次の休み時間も、私は玲央くんたちのグループの中にいた。
琴音は一人で、自分の席に座っている。ノートに何かを書いているようだ。
「——気になるようだったら、声かけてきたら?」
佐伯くんだった。私が「うん」と言って立ち上がった時、琴音に2人の女子が声をかけた。小池さんと長岡さんだ。確か小池さんは、漫画を描いてると聞いたことがある。
「も、もう大丈夫みたい」
「ああ……そうみたいだな」
琴音のホッとしたような笑顔を見た私は、安心する気持ちと少しだけ寂しい気持ちが入り混じっていた。
***
「ということで、期末テストに向けた第3回勉強会を始めます。今回から、国語の志帆先生が参加となりました。皆さん、拍手!」
玲央くんの言葉に、皆が笑顔で私に拍手を送る。ここは少し郊外にある、大型のハンバーガーショップ。2階にある、隅っこのエリアを陣取っている。
「じゃ、志帆が初参加ってことで、今一度、俺たちのルールを説明しておこう。まず入店時はもちろん、途中で一度は再オーダーすること。勉強禁止って流れが最近多いから、ここはお店のためにもお小遣いを削ろう。そして、私語禁止はもちろん、勉強での調べ物以外にスマホは触らない。——って、他にもなんかあったっけ?」
「いや、そんなもんじゃない? あと絶対じゃないけど、基本的には皆で同じ教科をやるって感じだね。今日は英語と国語って具合に。——志帆、こんな感じで大丈夫?」
そう聞いてきた莉奈ちゃんに「うん」と頷いた。結局、玲央くん以外も下の名前で呼び合うことになったのだ。
早速、勉強会が始まった。今日は英語からだ。
みんなとても静かに勉強している。クラスメイトがこのシーンを見たら、ビックリするかもしれない。
そして早速、玲央くんが楓に質問を投げかけた。
「で、玲央はどれが正解だと思うのよ」
「に……2番だよな?」
「違う、そこはハァヴ。だから、3番。疑問文の時は、現在形になるって前も言ったでしょうが」
「おっ……おー! そうだったな!」
ハーブ? お茶に使われる奴?
って、よくよく聞いていたら“have”のことだった。流石、ネイティブ……
あれ……?
そういや私、【頭の良さ】って今日いくつにしていたっけ……?