永遠の約束を交わそう
めぐる夏

夏の思い出

ミーーン、ミーーン、ジーー


8月中旬。


空は真夏特有の青さに満ちて、陽射しは容赦なく照りつけていた。


アスファルトの上では陽炎が揺れ、道端の草むらからは、ひたすら蝉の声が降り注いでいる。


耳にまとわりつくその喧騒は、まるで夏の記憶そのもののようだった。


麦わら帽子を深くかぶり、手に提げた花束と水の入ったひしゃくをぎゅっと握りしめた。


毎年この日は、おじいちゃんと二人、海沿いの墓地へ向かうのが習わしだった。


朝からじりじりと焼けつくような日差しの中、坂道を上がるたびに、蝉の大合唱が耳を満たす。


じっとしているだけで汗が背中をつたう。


「暑いなぁ…」


今年は、隣におじいちゃんはいない。



春先、庭の梅が散りきる頃、おじいちゃんは静かに息を引き取った。


あの日の、眠るような顔と、骨ばった手の感覚が、まだ掌に残っている。


穏やかな最期だったのに、まだ信じられない。


おじいちゃんの横顔や笑い声は、昨日のことのように鮮明で、ふとした瞬間に振り返ればそこにいる気がしてならなかった。
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