永遠の約束を交わそう
墓地は海を見下ろす小高い丘にある。


石垣の間から吹き抜ける風が、潮の匂いを運んでくる。


『お墓』というより『塔婆(とうば)』という方が納得するような、木に没年が刻まれているだけのものがそこにある。


ここにはおじいちゃんの軍人時代の先輩が眠っている。


ただ…


そこに彼らの遺骨はない。


「今年も来たよ」


周りの雑草を抜き、花を挿し、線香をあげて手を合わせながら、思い出す。


おじいちゃんはいつも


「彼はな、強いのに優しくて、じいちゃんにとっては兄のような人だったんだ」


そう言っていた。


大切そうに話すその表情は、戦争の記憶を語る時でさえ不思議と柔らかく、子供のような輝きを宿していた。


けれど今、その声も隣にない。


夏の蝉しぐれの中、墓前に響くのは波の音と自分の心臓の鼓動だけだった。




手を合わせ終えた私は、立ち上がって海を見渡す。


水平線の向こうまで続く青。


風に混じる潮の香りは、記憶の中のおじいちゃんの声と重なり合う。


上空を一機の旅客機が横切っていく。


銀色の機体は太陽を反射し、雲間を抜けて小さくなっていった。


その光景に、思わず呟く。


「……おじいちゃん、今も見てる?」


波が寄せては返す。


その響きに耳を澄ませながら、墓前に背を向け、砂浜へと歩き出した。
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