永遠の約束を交わそう
けれど七十余年前、この同じ海を、命を賭けて飛び立っていった人がいた。


胸に手を当て、深く息を吸った。


潮の香りが肺に染みて、涙が滲む。


おじいちゃんが生きていた頃、よく語ってくれた先輩のこと。


強くて優しい人だったと、誇らしげに、時に子供のような眼差しで話していた。


私にとっては会ったこともない人なのに、まるで昔から知っていたような不思議な懐かしさがあった。


「…おじいちゃん、そっちで先輩に会えてる?」


風に乗せるように呟いた声は、波の音に溶けて消えていった。


足元に打ち寄せた波が裾を濡らす。


ひんやりとした感触が、熱を帯びた身体に心地よく染み込む。



私は目を閉じ、ただ波音に耳を澄ませた。


海は絶えず呼吸をしているように寄せては返し、時間の流れすらも忘れさせる。
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