永遠の約束を交わそう
――その穏やかさを破るように。


「助けて!」


甲高い叫び声が砂浜のざわめきを突き抜けた。


反射的に顔を上げる。


沖の方で、小さな腕が水面を必死に叩いている。


まだ小学校低学年ほどの子供が、波に呑まれそうになっていた。


周囲の人々が慌てて声を上げているが、誰もすぐには飛び込めない。


潮が思った以上に荒れていて、足を取られるのが見えたからだ。


「…!」


考えるより先に体が動いた。


手に持っていた帽子を砂に落とし、サンダルを蹴り飛ばして駆け出す。


海水が足首を打ち、次の瞬間、冷たい波が全身を包んだ。


水の抵抗は思いのほか重い。


服が身体に絡みつき、息をするたび潮の匂いが鼻に刺さる。


けれど視線の先には、必死に助けを求める小さな瞳。


荒い波をかき分けて近づき、ようやく子供の腕を掴んだ。


近くに流れてきた浮き輪を掴ませ、自分はそのひもを握りしめる。
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