永遠の約束を交わそう
おかしい。
さっきまで聞こえていたはずの、夏のざわめきがない。
人々の声も、旅客機の音も、遠くの船の汽笛もない。
ただ風の音と、波の音だけが響いていた。
夏の青空がどこまでも広がり、沖には木造の桟橋と、見たことのない古い船が揺れている。
電灯も看板もなく、まるで古い写真の中に入り込んだような光景。
「…どこ、ここ…?」
胸の鼓動が速くなる。
波のしぶきが足元を濡らし、現実感を取り戻させる。
岸辺には白い軍服の男たちが立ち、遠くに零戦が低空で旋回していた。
潮風の匂いは同じはずなのに、どこか乾いた鉄の匂いが混じっている。
真上から夏の陽射しが容赦なく降り注いだ。
体は砂に沈み込み、服は海水で重く張りついている。
唇が塩辛く、喉は焼けるように渇いていた。
視界の端で、白い軍服の男がこちらに駆け寄ってくるのが見えた。
立ち上がろうとしたとき、遠くで誰かの声がした。
逆光で顔はよく見えないが、背筋を伸ばしたその姿は迷いがなく、影が長く砂浜に伸びている。