永遠の約束を交わそう
私の知らない夏休み

海辺の彼

水の中で息をすることはできないのに、不思議と苦しさはなかった。


代わりに、耳の奥で響くプロペラの回転音がどんどん近づいてくる。


波の轟きとは違う、低く力強い唸り。




冷たい感触が頬を叩いた。

ざぶん、と波が覆いかぶさり、身体が砂の上で揺さぶられる。


苦しくて、重くて、胸の奥が焼けつくようだった。


「…っ」


ゆっくりと瞼を開く。


視界に飛び込んできたのは、白く砕ける波と、どこまでも広がる空。


背中に触れる砂は粗く、湿り気を帯びていて、服はすっかりずぶ濡れだ。


視線を動かすと、すぐそばを波が打ち寄せては引き、足元にまで冷たさを残していく。

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