もう恋なんてしないはずだったのに〜御曹司課長の一途な愛に包まれて〜

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その夜。
俺は遅くまでオフィスに残り、一人で資料を見直していた。
昇進の重みは確かにある。けれど今、ふと浮かんでくるのは部下の表情だった。
昼間、花菱さんの瞳がわずかに揺れていたこと。
彼女の不安を、自分が作ってしまったのだろうか。
そう思うと、胸の奥がかすかに痛んだ。
彼女には自分を特別視しないで欲しい、そう思った。そんな気持ちになるのは初めてで、そう伝えたくて退社時間に追いかけようと思ったが、呼び止められ足を止めた。こんな衝動に駆られるなんて自分らしくない。

「大丈夫だ、俺は変わらない」

自分でそう呟く。
彼女の表情を見ていると自分の心が動く。この気持ちに素直になってもいいのではないか。
松木さんとふたり、休憩室で話しているのを見て胸がざわついた。
部下である彼女を困らせるつもりはない。でもこのまま手放すことなんてできない。そう思うと急に今まで頭の中でモヤがかかっていた部分がクリアになった。
自分自身の気持ちがようやく整理され、彼女と過ごす時間の心地よさの理由もわかった。
そうか、俺は彼女を手に入れたいんだ。