もう恋なんてしないはずだったのに〜御曹司課長の一途な愛に包まれて〜
御曹司だとか上司だとか関係ない。彼が気持ちを伝えてくれたように私も正直に伝えたい。震える声で、それでもはっきりと答えた。

「……私も、部長が好きです」

部長の目が一瞬驚きに揺れ、すぐに柔らかな光を帯びる。次の瞬間、彼の大きな手がそっと私の手を包んだ。

「ありがとう、日菜」

初めて呼ばれた名前。それには今までとの距離が変わったことを示していた。その言葉が胸の奥に深く響く。
夜風は冷たいのに、手の温もりがすべてを照らしていた。
彼の隣で一緒に未来を歩きたい。
私の手を引き、抱き寄せられた。今までよりもさらに色濃く部長のコロンが私の鼻をくすぐる。
今の状況が信じられない。
ううん、実感したくて私も手を伸ばした。部長のスーツに手を回すと思っていたよりも筋肉質でがっしりとした体幹に驚いた。その瞬間、さらに私を抱きしめる力が込められ部長の腕の中にしっかり包み込まれてしまった。

「ぶ、部長……」

思わずそう言うと、

「まだそう呼ぶのか、日菜……」

耳元で言われ心臓が飛び出しそう。抱きしめられたままこんな近距離で見つめられると何も考えられなくなる。そのくらい彼から色気が出ていた。そして今言ってと言わんばかりにずっとこのままの状態で私を腕の中から見下ろしている。

「ま、ま、ま……」

ククッと笑っている彼の姿に私は顔が熱く火照ってしまう。

「真紘さん、笑わないでください」

「ごめん、あまりに可愛くて悶え死にそうだ」

そんなことを彼が言うなんて信じられない。顔を上げた瞬間に私の目の前は彼に埋めつくされ、唇に熱いものが触れた。それはほんの一瞬、かと思った瞬間にはもう塞がれていた。思わず真紘さんのスーツを掴むと彼はさらに角度を変え私の形を確認するように繰り返し触れる。息が苦しい、そう思ったところ彼が離れた。頭を撫でられ、その手は気がつくと私の頬を包み込んでいた。
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