もう恋なんてしないはずだったのに〜御曹司課長の一途な愛に包まれて〜
「あ、部長」

「どうしたんだ?」

落ち着きをなくした雰囲気に戻ってきて驚いたようだった。松木さんがすぐにデスクに向かうと今の状況を説明する。

「つい先ほどイベント会場から荷物が届いてないというか連絡がありまして。調べたところ荷物を積み込んでいるコンテナごと不明になっているようです。今それはみんなで手を尽くし探しています。インドネシアには花菱さんに連絡役となってもらいコンタクトをとったところ向こうにもコンテナが不明になっていると連絡がきたようで探しているとのことです。それと、向こうに在庫があり空路と陸路で少しでも運び入れられるよう動き始めました」

ここまでの状況を一気に松木さんは報告していた。現状を把握したのか部長は頷いていた。

「わかった。それじゃあ今あるだけでもなんとか日本に輸送できるよう動こう。インドネシア内の陸路も確保できるのか確認してくれ」

私の顔を見て最後の言葉を言っていたので私も、はいと返事をした。
日本国内のみだけでなく向こうの陸路の確保までは私も頭が回っていなかった。これではツメが甘いところだった。もう一度インドネシア側に連絡をとり、こちらで空路の手配が取れるか確認をしているのでそちらは工場から空港まで輸送できるよう準備を進めてほしいと伝えた。
松木さんのこの報告だけでトラブルを把握し、その上私たちの見落としまで指摘できる彼はやっはりすごい。
部内みんなが手を尽くし作業にあたるが、陸路はすぐに決まらず週明けに持ち越されることになってしまった。もうこの時点で19時を過ぎており決まらないのは致し方ない。ましてや週末のため事態が動かないのはもどかしいが今やれることは何もなくなってしまった。コンテナの行き先も不明のままだ。時差もありこれ以上粘っても変わらないと判断したのは部長だった。

「みんなお疲れ様。もうここまでにしよう。不安はあるが現状何もすることができない。週明けにならないと手配も難しい。だからここで切り上げよう」

不安でみんな何かしていないと落ち着かなかった。万が一イベントでブースが出せなくなくなったらと思うと背筋がゾッとするが、みんなこれ以上はできることは今はないということもわかっていた。部長が切り出したおかげでみんな手を止めることができた。
パソコンの電源を落とすと帰宅準備を始めた。

「花菱さん、本当に今回も助けられているよ。ありがとう」

松木さんが帰り際に声をかけてきてくれた。彼も英語を使えるが、統括のため自分がインドネシアとの調整ばかりを行なっているわけにもいかない。だからこそ私に声がかかったのはわかっている。でもあえて声をかけてくれ、自分を頼ってくれたのだと思うと自然と笑顔が浮かぶ。

「いえ、私がお役に立ててよかったです。松木さんも最初の連絡からの動きが早かったですね。さすがだと思いました」

「そんなことないよ。また週明けよろしく」

そう言うと軽く手をあげ、早足で会社を出て行った。私も彼の背を追うように会社を出て約束のスカイツリーへ向かう。
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