もう恋なんてしないはずだったのに〜御曹司課長の一途な愛に包まれて〜
お店を出るとすっかり寒くなっていた。

「明日出かけないか? 本当は今日からと思ったが、最初からがっついた俺としては少しは落ち着かないと、と思ってな」

自分の発言に苦笑いを浮かべながらそう言う。それを言うなら最初から付いて行った私も私じゃない?なんて私も笑ってしまう。

「明日出かけたいです」

いつになく明るい声でそう答えると彼は私の手を取り歩き出した。

「さっき元彼に会っただろう? どんな男なのか気になっていたんだ。そいつのせいで恋なんてしないと思ったのだとしたら俺はあいつを恨まないといけないのか、それともそのおかげで誰とも付き合わずにいてくれたから感謝をすべきなのか、って」

「え?」

「あいつのせいで日菜は恋愛なんてこりごりだと思ったんだろう?」

それはそう。詳しくなんて真紘さんに話していないのにきっと彼は直感でわかったのだろう。それに隣にいた彼女を見てどう思ったのか気になった。やっぱり皓介みたいにあんな綺麗な人を見たら心変わりしてしまうものなのだろうか。どうしても聞きたい。今を逃したらこの話はもう二度としないかもしれない。

「はい。彼に料理も英会話も身だしなみについても色々言われました。私なりに努力してきた結果がこれです。あんな綺麗な彼女がいたら私なんてあっという間に捨てますよね」

彼の返答を試すようで私って本当に醜い。彼にそんなことないよって言って欲しい。そんな醜い自分が嫌いになる。やっぱり彼の返事を聞くのが怖くなり歩き出すと、繋いだ手を強く引かれ気がつくと腕の中に閉じ込められていた。

「そんな訳ないだろう。もし俺が彼と同じ立場でも俺は日菜を選ぶ。俺のために努力し続けてくれる日菜を愛さない訳がない。むしろ愛おしさしか感じないよ」

抱きしめられる彼の腕に力が込められる。

「そんな努力を俺ではなく、あいつのためにしていたと聞いてどれほど俺が嫉妬しているかわかるか? それだけじゃない。俺は日菜の周りにずっと嫉妬し続けている。そんな俺を嫌いになるか?」

嫉妬?まさか真紘さんが嫉妬するなんて信じられない。抱きしめられた彼の腕は緩まる様子はない。

「本当に?」

「あぁ、部内のみんなにも嫉妬している。みんな最近気安く話しかけ過ぎだと思うんだ。特に松木さんは距離が近い。あと2歩は離れて話すべきだな」

クスッと笑ってしまう。

「なぜ笑う?」

ここでようやく私を閉じ込める手が緩んだ。
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