もう恋なんてしないはずだったのに〜御曹司課長の一途な愛に包まれて〜
「なぁ、顔色悪いけど大丈夫か?」

翌朝すごい顔で出勤した私に松木さんはすぐに気がついた。泣きながらDVDを見て、そのまま寝てしまった。
起きた時にはものすごく喉が渇いており、どれだけ泣いたのだろうと情けなさにまた涙が出そうだった。
シャワーを浴び、いつもと同じように黒いスーツを着て髪をまとめる。鏡に映る自分はボロボロでまた情けなくなる。どうしてこうなんだろう。

「今日は帰ったほうがいいんじゃないか?」

私は首を横に振るが、松木さんの声に周囲も心配そうに覗き込んできた。

「花菱さん、今日は急ぐものもないし帰っても大丈夫よ。最近頑張っていたから疲れが出たんじゃない?」

橋本さんも声をかけてくれる。あまりみんなに見られたくないのに心配で声をかけてくれる。ありがたいのに腫れぼったい顔を見られるのが恥ずかしい。

「すみません。皆さんのお言葉に甘えて今日は帰ってもいいですか?」

「もちろん。部長には体調不良で帰ったと伝えておくから。明日も無理しなくていいけど、それよりひとりで帰れる?」

「大丈夫です。本当にすみません」

私はみんなに頭を下げるとバッグをもち営業部を出た。このままここにいたら真紘さんが来るかもしれないと思うと足早になってしまった。彼にこんな姿を見られたくない。
会社を出たが家に帰る気持ちになれない。あの部屋に戻ってもまた泣くことしか思いつかないから。
でも一体どこに行ったらいいのだろう。仕事をサボるなんて初めてで行き先に困る。
駅に着くとなぜか家と反対方向の電車に乗っていた。
そして着いたのはスカイツリーだった。真紘さんと約束していたのに仕事で遅くなり、さらには皓介と会ってしまい私はここに登らずに終わってしまった。登ったことがなかったから真紘さんに誘われ嬉しかったのを思い出し、足がそちらに向いた。登った思い出があるわけでもないのにここに来るなんておかしい。でもなんだか高いところから東京を見たくなった。
< 81 / 96 >

この作品をシェア

pagetop