もう恋なんてしないはずだったのに〜御曹司課長の一途な愛に包まれて〜
そう思っていたが今日の景色は全く違っていた。
そこかしこに置かれたランプで水庭が照らされている。部屋が暗いせいかまるで自分自身も水庭に入り込んでいるようなそんな錯覚に陥る。空には満天の星が見え、目の前には幻想的な風景が広がっていた。圧倒されるこの景色を前に立ち尽くしていると彼が私の前に跪いていた。
えぇ?
目の前の光景に唖然とする。まさか……。

「日菜……」

名前を呼ばれただけで胸の奥が熱くなる。
彼はポケットから小さな箱を取り出すとゆっくり私の前に差し出した。

「俺はこれからもずっと日菜のそばにいたい」

箱の中にはシンプルなデザインの指輪が静かに輝いていた。それを見て目の奥がじんわりと熱くなる。

「日菜は不器用だし、何より自分を過小評価してばかりだ。けどな、俺にとっては誰よりも誇らしく思っている。推しのためじゃなく、誰かのためでもなく、俺のために笑っていて欲しい」

涙が視界を曇らせる。

「でも、真紘さんには縁談が来ているんですよね。私はあなたのためになれない。だから……」

ここに来るまでにずっと考え続けていたことをようやく口にした。

「縁談? そんな話もきたような気がするがすぐに断っている。俺には君しか考えられないから」

「でも……本当にいいんですか? 私なんかで」

震える声で尋ねると彼は首を振った。

「私なんか、じゃない。俺はお前じゃなきゃダメなんだ」
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