〜続〜空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
青空に勉強を教えに行っていた俺は樹からの電話で彼女が街を去ることを知った。

父親が突然亡くなり、東北の親戚のところに行くという話だった。

愕然とする俺に向かって青空は“行って”と力強く言ってくれた。

俺は感覚のない手足を必死に動かし、電車とバスを乗り継いで一度来ただけの彼女の家に辿り着いた。

けれど時既に遅し。

インターホンを何度押そうとも中から声はしない。

喧しいくらいに俺を追いかけてきていた彼女の姿が現れない。

俺は膝から崩れ落ちた。

アスファルトについた手のひらがジリジリと焦がされていく。

間に合わなかった。

何も言えなかった。

俺は何も出来なかった。

何度も俺の心をノックしてくれたのに、

こんな俺を好きになってくれたのに、

俺は何もしてあげられなかった。

いつももらってばかりで、

ありがとうって言ってもらってばかりで、

俺は感謝の言葉ひとつも言えなかった。

それに…


「おめでとう…」


言いたかった。

言うつもりだった。

直接会って言いたかった。

お誕生日おめでとうって。

産まれてきてくれてありがとうって。

出逢ってくれてありがとうって。


そう何度も何度も彼女の笑顔を思い出しながら泣いて。

涙が枯れ、ふと空を仰いだ時。

俺は思った。


…好き。


青い空を彼女のように真っ直ぐに飛んで行く飛行機を見つけて、枯れたはずの涙が一筋頬を伝った。

俺が本当に好きだったのは、

キミだった。

…瀬生碧萌(せおみなも)。

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