自分を好きになる話
 美空のいいところも悪いところも、たくさん知っ

てる。

 いつも口悪くてひどいことばっか言うくせに、ほん

とに大事なときに隣りにいて味方でいてくれる。

 きっと、美空の家族を除けば、一番私が美空のこと

をよくわかってる。

 そんなん美空だって一緒だ。

 私が言いたいことはいつも美空が理解してくれる。

 私に嫌なことがあると、美空がそれに気づいて私を

元気づけてくれる。

 いつでもずっと隣りにいて、たくさん思い出を作っ

てきた。

 美空にはほんとに感謝しきれない。

美空ってほんとにいい友達だ。

けど、だからこそ嫉妬する。

羨ましくなる。

妬ましくなる。

入れ替わりたくてどうしょうもなくなる。

ずるい。なんで私はそうじゃないの?

私が欲しいもの全部もってる。

私には無いものを全部もってる。

なんでそうなったの?

ひどい。

 けどわかってる。こんなの醜い女嫉妬だ。妬めば

妬むほど私は汚くなる。

 やめなきゃって思うのに、そう思えば思うほどもう

止まらない。

 こんな醜い私を知れば、美空だって私から離れてい

くかもしれない。

 中学生になったら、周りの背も伸びて、環境も変

わって、楽になるかなって思ってた。

 思い違いだった。

 急に同級生の背が伸びるわけ無いし、メンバーだっ

てあまり変わらない。

 必死に嫌なところを取り繕って自分を作って、そん

なことに意味があるわけ無いのに。

 無駄なことばかりに時間を使ったな。

 結局今日も、このモヤモヤの解決策は見つからなか

った。

 私はモヤモヤしたとき、いつも脳内会議を開く。

 モヤモヤがあると気になりすぎるA型だから。

 大体の議題では心配を一つずつ潰して、解決策が

出る。けれど、何回か開議しているこの議題で、解決

策が見つかったことは一度もない。

 「よし、出るか。」

 自分に言って、お風呂を出てタオルで体を拭く。

 真っ白なタオルは、あまり水を吸い取ってくれなか

った。
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