幼なじみの過保護愛 -星のかけらは純愛のしるし-
ドリンクの本数を確認するために下を見ていて、試合の状況から意識が逸れていたことも災いしたのかもしれない。
誰かが「咲!」と叫んだ声から顔の左側で高い破裂音がするまで、時間にして一秒もなかったと思う。
気がつくと咲はその場に倒れていて、ぐるぐると回る意識の中で、駆け寄ってきた光希や他のサッカー部員、同じくマネージャーを務める女子部員や顧問の先生の声がひっきりなしに飛び交っていた。
その記憶もすぐにぷつんと途切れてしまい、次に目が覚めたとき、咲は近くにある総合病院の救急処置室へ運び込まれていた。
ボールが当たったのは左のこめかみ付近だった。内出血のせいで顔の一部が青紫色に腫れて、夏休み後半はゾンビのような痛々しい姿で過ごすことになったが、幸い脳や骨に異常は見られなかった。だから腫れと内出血さえ治まれば顔も元通りになる。さほど大きな怪我ではない、と――そう思っていた。
二週間ほど経過すると顔の腫れも痛みも引いたが、なぜか左目が見えにくくなり、視界が霞むようになった。左目の視力が低下したことで正常な右目にも負荷がかかったのか、両目ともにやけに疲れる。勉強や細かい作業を続けると頭痛を生じることもある。
何かがおかしい……。そう思って再度病院を受診したことで発覚した。飛んできたボールに勢いがついていたのか、当たり所が悪かったのか、咲はただ顔が腫れただけではなく、目の奥にある網膜が剥がれてしまう〝網膜剝離〟になっていたのだ。
最初に『このまま放置すると失明する可能性がある』と言われたときは恐怖を感じたが、すぐに手術を受けたことでそれ以上の悪化は免れた。