【改稿版】幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。

『今、どこにいる？』
『さすがに遅くないか？　連絡くらいしろ』
『まだ安浦先生の家なのか？』
『連絡しろ』
『自分の時間の管理もできないのか？』
『連絡しないのは無責任だぞ』
『メシはどうするんだ』

　……嘘でしょ？
　こんな調子のメッセージが、50通くらい入っていた。
　たった数時間、連絡を怠っただけで、ここまで……？
　吐き気にも似ためまいを覚え、私は慌ててスマホを伏せた。

「そうだ。今度、お礼も兼ねてごちそうさせて下さい」

　後片付けをしている時に、桐人さんが言ってきた。
　
「そんな、仕事の一環なのに」
「僕がお願いしたのは、父の洗濯物だけですよ。それ以外は頼んでいません」
「すみません、差し出がましいことを……」
「謝るのなら、おとなしく誘いを受けて下さい。そうですね……あなたが気にされるのでしたら、これも仕事にしましょう！　穂鷹出版とマクベリの交流として！」

　我ながらいいアイデアだと言わんばかりに、桐人さんは屈託のない笑顔を向ける。
　どうやら、何がなんでもお礼がしたいらしい。
　私は観念し、桐人さんと食事に行くことになった。