【改稿版】幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。
 *
 
 安浦先生に最初お会いした時は、言うほど気難しい方だとは思わなかった。けれど洗濯を毎日しなければいけないのはとても大変で、少量とはいえ手間がかかる。
 新しい寝間着や下着を用意することは簡単だ。でも、脱いだものを数日放置しておくことが許せないらしく、私は今日も安浦家の洗濯室にいる。
 
 洗濯をしている間、キッチンを借りて食事を作る。自分がお昼に食べる分と、桐人さんの夕食だ。桐人さんは、食事まで作ってもらうのは違うと断ってきたが、自分の分を作るついでだと言って作らせてもらっている。
 しかし、今日は連日の疲れか、どうにも眠い。
 私は、食事を終えた後、そのままダイニングテーブルに突っ伏して眠ってしまった。

 目が覚めると、肩に毛布がかけられていた。
 いつの間にか桐人さんが帰ってきていたようで、向かいでご飯を食べていた。
 
「す、すみませんっ、私ったら……!」

 慌てて立ち上がり、スマホで時間を確認する。
 すでに午後六時を過ぎていた。
 
 それよりも、何これ!?
 メッセージアプリの通知で画面が埋まっている。
 軽く見ると、全部裕貴からのようだった。
 
「だいぶお疲れのようですね。洗濯は干しておいたから、大丈夫ですよ」

 桐人さんに言われて、私は一旦スマホを閉じて謝った。
 
「本当に、すみません!」
「どうして謝るんですか? お願いしてるのは、こちらの方なんですから。それに、ご飯も美味しいです」

 寝顔を見られてしまうなんて、恥ずかしい……。
 でも、向かいで美味しそうに食べてくれている桐人さんを見て、少しホッとした。
 桐人さんが食事をしている間に、こっそりと裕貴からのメッセージを確認しておく。
 
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