【改稿版】幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。
……言えないでしょうね。
先ほど、安浦先生は「元婚約者に破り捨てられた」としか言っていない。
ここで私の婚約者は自分だと名乗り出れば、自白しているようなものだ。
私たちの様子を見て、周りがざわめき始める。
「裕貴、おまえ、まさか……!」
裕貴の父親である穂鷹会長だけは、私と裕貴が婚約していたことを知っている。
気付いてくれた人がいるというだけで、私の心は救われた。
「父さ……会長、これは……!」
「帰ったら緊急会議だ。わかったな」
会長の顔は怒りの色を隠しきれず凄んだ表情に変わり、逃れようのない圧力を感じさせた。
「……はい」
裕貴は青ざめた顔で、ふらふらした足取りで会場の隅へと移動していった。
私は、その姿を壇上から複雑な思いで見つめる。
怒りとか、悲しみとか、裕貴に対してそんな感情は、もう持ち合わせていなかった。
ここまでできたのは、すべて桐人さんと安浦先生のおかげだ。
──裕貴は見事に引っかかってくれた。
報復は終わった。
そう思うと、緊張が切れたのか、私の足はガクガクと震え出した。
私はその場にいられなくなって、喧騒に紛れて、会場の外へ飛び出していた。
「しのぶさん!?」
先ほど、安浦先生は「元婚約者に破り捨てられた」としか言っていない。
ここで私の婚約者は自分だと名乗り出れば、自白しているようなものだ。
私たちの様子を見て、周りがざわめき始める。
「裕貴、おまえ、まさか……!」
裕貴の父親である穂鷹会長だけは、私と裕貴が婚約していたことを知っている。
気付いてくれた人がいるというだけで、私の心は救われた。
「父さ……会長、これは……!」
「帰ったら緊急会議だ。わかったな」
会長の顔は怒りの色を隠しきれず凄んだ表情に変わり、逃れようのない圧力を感じさせた。
「……はい」
裕貴は青ざめた顔で、ふらふらした足取りで会場の隅へと移動していった。
私は、その姿を壇上から複雑な思いで見つめる。
怒りとか、悲しみとか、裕貴に対してそんな感情は、もう持ち合わせていなかった。
ここまでできたのは、すべて桐人さんと安浦先生のおかげだ。
──裕貴は見事に引っかかってくれた。
報復は終わった。
そう思うと、緊張が切れたのか、私の足はガクガクと震え出した。
私はその場にいられなくなって、喧騒に紛れて、会場の外へ飛び出していた。
「しのぶさん!?」