【改稿版】幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。
「ま、待ってください。どうしてですか、僕たちは婚約したんですよ」
「はい。でも、仮初ですよね? 裕貴を見返すまでの……」
そう言って、胸の奥がちくりと痛んだ。そうだ、これは仕返しのための婚約。頭ではわかっていたのに、桐人さんの言葉を本気にしたい自分がどこかにいる。
止められるなんて思わなかった。名残惜しさと戸惑いが入り混じって、言葉が出てこない。
桐人さんは、そんな私の手を座ったまま静かに取った。
「もう、その名前は出さないで下さい。……嫉妬で気が狂いそうになる」
「えっ?」
驚いていると、桐人さんも驚いた表情を見せて立ち上がった。
「まさか、気づいていなかったんですか。これだけ一緒にいて、あなたに惹かれないわけがないでしょう? 病院の屋上で悩みを打ち明けられた時、右手の指輪がなくなっていたことに気がつきました。これはチャンスなのではと、多少の下心も抱きました」
真っ直ぐに見つめられたかと思うと、今度は申し訳なさそうに眉を下げる。
桐人さんの手が、少しだけ震えて、しっとりとした感触が伝わってきた。
「ちゃんとしたプロポーズは、事が終わるまで我慢していました。あなたが納得できる結果になったら告おうと。だけど……。すべて終わっても、あなたの心は晴れないままのようですね」
見透かされている。
一体この人は、どれだけ私を見つめて、どれだけ私の心をわかってくれているのだろう。
その優しさに、心がほんのりと満たされていく。
「言ったでしょう? 僕はしのぶさんを信じると」
『信じる』
なんて強い言葉なんだろう。
そう言われるだけで、安心してしまう。
「だから……。僕ではだめですか? 僕がしのぶさんの元気の素には、なれませんか?」
そう言って桐人さんは、私の左手を取る。
「はい。でも、仮初ですよね? 裕貴を見返すまでの……」
そう言って、胸の奥がちくりと痛んだ。そうだ、これは仕返しのための婚約。頭ではわかっていたのに、桐人さんの言葉を本気にしたい自分がどこかにいる。
止められるなんて思わなかった。名残惜しさと戸惑いが入り混じって、言葉が出てこない。
桐人さんは、そんな私の手を座ったまま静かに取った。
「もう、その名前は出さないで下さい。……嫉妬で気が狂いそうになる」
「えっ?」
驚いていると、桐人さんも驚いた表情を見せて立ち上がった。
「まさか、気づいていなかったんですか。これだけ一緒にいて、あなたに惹かれないわけがないでしょう? 病院の屋上で悩みを打ち明けられた時、右手の指輪がなくなっていたことに気がつきました。これはチャンスなのではと、多少の下心も抱きました」
真っ直ぐに見つめられたかと思うと、今度は申し訳なさそうに眉を下げる。
桐人さんの手が、少しだけ震えて、しっとりとした感触が伝わってきた。
「ちゃんとしたプロポーズは、事が終わるまで我慢していました。あなたが納得できる結果になったら告おうと。だけど……。すべて終わっても、あなたの心は晴れないままのようですね」
見透かされている。
一体この人は、どれだけ私を見つめて、どれだけ私の心をわかってくれているのだろう。
その優しさに、心がほんのりと満たされていく。
「言ったでしょう? 僕はしのぶさんを信じると」
『信じる』
なんて強い言葉なんだろう。
そう言われるだけで、安心してしまう。
「だから……。僕ではだめですか? 僕がしのぶさんの元気の素には、なれませんか?」
そう言って桐人さんは、私の左手を取る。