マリオネット
「うう゛」
 口を塞がれているため、大きな声が出せない。

「今仕事帰りだったの?風俗とかやってるんだろ?」

 そう言って、男は強引に私の服を脱がそうとする。一生懸命足蹴りをし、抵抗をする。
 
 一瞬、男の手が離れ
「助けてっ!」
 という一声が出た。

 あれっ。私、さっきまで死にたいって思っていなかったっけ?だったら、別に自分がどうなろうがいいよね。
 でもなんでだろう。怖い、涙が出てくる。襲われたくない、死にたくないって思っている。最初から死ぬ勇気なんて、私にはなかったんだ。

 私が叫んだ声を聞いて
「しょうがねーな」
 ただ見ていた男までもが私を抑え付けた。

 私が真面目に生きていれば、こんなことにはならなかったよね。罰が当たったんだ。

 そう思った時――。
「やめろよ」
 一人の男性が声をかけてきた。

 暗くてよく見えないが、まだ若い男性の声だった。
 男二人は酔っているせいか「うるせーな!」と男性に威嚇した。男性は無言のままだ。

「あぁ?テメーよく見れば、ホームレスじゃねーのか?汚ねーカッコして。バカにすんじゃねーよ!」

 そう言って男は、男性に殴りかかった。が、それを避け、男の鳩尾に一発拳を入れたように見えた。

「ぐっ……」
 腹を抑えている男。
 もう二人も加勢しようとして、私から離れた。
「逃げて」
 一言、男性に言われ、我に返る。
 私は、その場から思いっきり走り出した。

「おいっ!」
 後ろから追って来ようとした男がいたが、男性が背中を掴み、止めてくれた。
「テメー!」
 男が逆上している声が聞える。
 振り返ったら捕まると思い、私はそのまま走り続けた。
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