マリオネット
「一カ月くらいかな」
 本当は、昨日正式に交際を始めたなんて言えるわけがない。

「まだ付き合ってそれほど経ってないんですね」

「そうだね……」

「すみません、いろいろ聞いちゃって。ありがとうございました。あっ。転んだところ大丈夫ですか?あの時は飲みすぎちゃってすみませんでした」

 おそらく故意にやったことなのに。
 よくそんなことを言えるなぁ。

「うん。大丈夫だよ。ありがとう」

 さすがに顔が引きつってしまったかも。
 
 坂本さんは一礼して、自席に戻って行った。

「ふぅ……」
 朝からなんか疲れちゃった。
 仕事終わりは凪とスマホを買いに行く予定だし、定時に上がれるように頑張らなくちゃ。

 お昼休憩時、トイレに行くと坂本さんと酒井さんが歯磨きをしていた。
 あぁ、このパターンなんか嫌な感じだな。
 そう思いながらトイレの個室に入る。

 私に気付かなかったのか
「ねぇ。藤崎先輩に、彼氏のこと聞いてみたんだけど」
 そう坂本さんが酒井さんに話しかけていた。
 歯磨きが終わり、二人はお化粧を直しているらしい。

 私はトイレの個室にいるため見えないが、そんな風に予想した。

「あぁ!あのイケメンの彼氏!?なんか、年下っぽかったよね?マジびっくりしたわ」
 酒井さんの声が大きくなる。
< 131 / 186 >

この作品をシェア

pagetop