マリオネット
 無言で立っていると
「話したいことがあるんだ。飯でも食べに行かないか?」

 別れる時とは違い、表情は柔らかな印象を受けた。翔太郎に未練なんてない。

 でも、話したいことってなに?盗聴器のこと?
 これは聞くチャンスなんじゃないか。

「私、彼氏がいるの。翔太郎だってもう結婚してるんでしょ?地元の友達から聞いたよ。なのに、ご飯なんて食べに行っていいの?」

 向こうはもう既婚者だ。
 女性、しかも元彼女とご飯なんて食べに行ったと知ったら、お嫁さんも嫌な気持ちになるに違いない。

「別に疚しいことをするわけじゃないし、いいだろ?飯が嫌なら、軽くお茶でもいいよ。カフェとかで」

 そこまでして私に話をしたいことって何?

「わかった。じゃあ、彼に一応電話するから。先にカフェ、入ってて」
 彼という言葉を聞き、翔太郎が一瞬怪訝そうな顔をしたのがわかった。

 凪には、隠し事をしたくない。
 そう思い電話をする。
 良かった、こういう時にすぐ連絡できて。

 何回かのコールの後、凪は電話に出てくれた。

<陽菜乃さん、お疲れ様!大変だったね>
 彼の声を聞いて安心する。

「うん。凪も面接お疲れ様。良かったね!受かって」

<うん。店長もなんか優しそうだったし、雰囲気もそんなに悪くなかったから良かった。ただ、忙しい時間のシフトに入るから頑張らないと……>

 本当は早く家に帰って、凪と話をしたい。

 でもーー。
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