マリオネット
「大丈夫です。一人で帰れます」
 そう言って、交番を出ようとした時だった。

「陽菜乃さん!」
 凪の声がする。
 振り返ると、彼がこちらに向かって走ってくるところだった。

「どうしたの?交番から出てきて。何かあったの!?」
 彼の額には珍しく汗が滲んでいた。
 こんなに寒いのに、一生懸命探してくれたんだ。

「キャッチに絡まれて殴られそうになったけど、周りの人が助けてくれて。話を聞かれてただけだよ」

「ケガしてない?大丈夫?」
 彼の顔を素直に見ることができず
「ケガはしてない。大丈夫」
 そんな素っ気ない態度しかできなかった。

「陽菜乃さん、電話にも出てくれないし、返事もくれないし。すごく心配した。あの写真を見たからでしょ?俺、絶対あんなことしてないから。家に帰ってゆっくり話そう」
 凪の言葉を聞いた瞬間、涙が溢れ出した。

「俺じゃない」と否定をしてほしかった。
 その言葉が聞きたかった。

「怖かったね。すぐ見つけてあげられなくてごめんね」
 彼は私を責めることなく、冷静だった。

 

 二人で帰宅する。

「陽菜乃さん、ご飯まだ食べてないよね。お腹空いてない?」

「空いてない」

「わかった。じゃあ、この写真だけど……」

 そう言って、凪が女の子と一緒に写っている写真を一緒に見る。
 見たくない、けど凪を信じたかった。
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