マリオネット
「えっ……」

「凪ほどじゃないかもしれないけど。私もいろいろあって、人生終わりでもいいやって思ってしばらく生きてたの。あんな目に遭って、今では後悔してるけど。この家にも男の人、何人か入れたことあるし。でもまた来たら困るから、そいつらを追っ払ってほしいのと……。私、家事が苦手だから手伝ってほしい。私の給料じゃ、あんまりお小遣いは渡せないかもしれないけど、家賃と食費と水道光熱費は私が払うから!どう?」

 彼はしばらく無言だった。
「それでいいの?」

「うん!」
 彼からOKとも取れる返事が聞けて、嬉しくなってしまった。

「じゃあ。陽菜乃さんは、俺のご主人様ってことで何でも命令してください」

 なにそれ、可愛すぎる。こんなイケメンにそんなことを言われたら……。

「可愛いーー!」
 私は思わず、彼を抱きしめてしまった。
 あれっ?そう言えば、自分から誰かを抱きしめるっていつぶりだろう?

 凪が一向に動かない。
「あっ、嫌だったよね。ごめんね」

 慌てて離れようとすると
「これは、抱きしめ返していいの?」

 あぁ、そうか。あくまで私がご主人様だと思っているのかな。

「その辺は、凪に任せるよ。嫌だったら反応しなくていいし、もし良かったら……」
 彼が私を抱きしめ返してくれたのがわかった。
 なんか安心する。

「ていうか、凪。痩せすぎだから、たくさん食べようね。身長は何センチくらい?」
 
 母親になった気分だ。

「百七十五センチくらい……」

 私より十五センチも高いんだ。
 なのに、こんなに痩せてる。抱きしめた感じでわかる。
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