マリオネット
「ていうかさ、陽菜乃さん。俺がもし殺人犯とか悪い奴だったりしたらどうするの?こんな見ず知らずの奴をさ、家の中に入れて。お金盗ってバックレるかもしれないよ」

「そうだね。そうしたら……。本当に人生終わりでいいや。凪が私を殺してね?」

 もうそれでいい。
 捨て猫を拾った気分で大切にしようと思い、我が子を想う母親の気分も味わった。
 
 けれど、心の底から彼を信じてはいない。
 
 凪だって、こんなにカッコ良いんだもん。しばらくして生活が安定したら、違う女の子を好きになって、私の前から居なくなる。それくらいわかっている。今が楽しければそれでいいんだよ。
 将来のことなんて、何もわからない。考えたくもない。
 どうせまた私は一人になるんだから。

「自分で聞いておいてあれだけど。何言ってるの?殺さないよ。俺、ご主人様の傍にずっといるから」

 彼の言葉が嬉しいけど、切ない。
 約束とかもう信じられなくなっていた私は、この時の凪の言葉さえも信じることができなかった。



「ごめん。夕食、レトルトしかない!」
 二人でレトルトの牛丼と、インスタントのお味噌汁を食べた。
「いや。十分、ご馳走だから」
 そう言って食べてくれる彼。
「ご馳走様でした」
 きちんと手を合わせ、お皿をキッチンに運んでくれる。

「ありがとう、あとは私がやるから」

「いや。これ、俺の仕事でしょ?陽菜乃さんゆっくりしてて」

 あっ、こういう約束だったっけ?
 というか、今まで男性に食器を洗ってもらったことがない。
 翔太郎の時だって、なんだかんだで尽くしてた気がする。
 一人の時は家事してないって翔太郎にはバレてたけど。

 凪が食器を洗っている後ろからハグをした。
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