マリオネット
 凪が歯を磨いている間に、準備をするフリをして、昨日机の上に置きっぱなしにしておいた財布の中をさりげなく確認した。
 何も盗られてはいない、安堵する。

 いつからこんなに疑り深くなったんだろう。
 一回お札を抜かれてからか。

 あと、いろんな人がいたもんな。
 自分からデートに誘っておいての割り勘男、セックスに誘っておいてホテル代を求めて来る男。
 何回か遊んだ後に付き合えないって言ったら、殴ってきた男もいた。

 翔太郎と別れてから、一気に男性経験を積んだ。
 私って、男運無さすぎ?

「普通」っていうものが何かわからない。

 そんなことを考えていると
「陽菜乃さん、洗面台空いたよ。ごめんね。先に使って」
 昨日とは違い、大分懐いてくれているみたい。

「うん、ありがとう」

 凪が一緒だから、別にいつもと同じでいいよね。カラーコンタクトと付け睫毛はしてないけど、お化粧はきちんとしたつもり。
 洋服も仕事する時の物ではなく、デートする時用。ただ髪の毛はウィッグじゃなく、地毛で行くことにした。

「変じゃないかな?」
 一応、凪に確認する。
「変じゃないよ。綺麗だよ」
 彼はニコッと笑ってくれた。
 まぁ、ご主人様に文句は言えないよね。

「じゃあ、行こうか」
 凪と一緒に家を出る。


 まず向かった先は――。
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