マリオネット
 凪がお風呂を掃除してくれたというので、言葉に甘えて先に入ることにした。こんな生活してたら、本当に結婚なんて無理なんだろうな。
 まぁ、いいや。
 一度は死んじゃいたいと思っていたから、今が楽しければとりあえず良しとしておこう。

「先にありがとう。次、どうぞ」

「うん。行ってくるね」

 凪がお風呂に入っている間、テレビを見る。
 あっ、これ毎週楽しみにしているやつ。ラブシーン多めの不倫がテーマのドラマだ。

 最初は一人で見ていたが、凪がお風呂から出てきた。
「あっ、ごめん。テレビ、これ見ててもいい?」
「うん、もちろん」
 二人で鑑賞する。

 俳優さん、ヒロインもヒーローも綺麗だな。
 
 そう思って見ていたが――。

 えっ?いいの?この時間帯で、結構ハードなキスシーンなんですが。
 自分がしたことがないわけではないが、ドキドキしてしまった。
 
 えっ、えっ、ちょっと?ベロベロしているじゃん。
 凪はどう思ってるんだろ。
 チラッと彼を見ると、無表情で見ていた。
 彼だって子どもじゃないし。いいか。

<お願い、抱いて?>

 俳優さんの一言に私は心拍数が上がった。
 えっ、相手は奥さんいるのに?
 そんなこと言っていいの!?
 ドラマの世界に引き込まれていく。

 ヒーローがヒロインを押し倒した。
<あっ……!!>
 首筋にキスをされ、色っぽい声を出しているのはヒロイン。

 そこで、今回の放送分は終わってしまった。
 私はテレビを消した。
「結構この時間にしては、過激だったね」
 凪は平然としていた。

「うん。そうだね」
 まだドキドキしている。演技なんだろうけど、なんでみんなあんなに気持ち良さそうなんだろう。
 羨ましいよ。私なんて、自分で自分の身体を触っていた方がよっぽど気持ち良いのに。
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